番外編 優しい魔王は苦労が多い 後編
太陽が平らな大地にくっつきだした頃、私はミーティアさん達に連れられて、薄暗い飲み屋に連れてこられた。
そして、店員さんの案内で個室に案内された、私たちを待っていたのは、若い男性が三人、片側に座ってお酒を飲んでいる光景だった。
そして、そんな個室のもう片側に私達3人が座った所で、会話が始まった。
「という事で、ミーティアでーす! 魔王秘書やってまーす、ミーちゃんってよんでね~! よろ(自主規制A)~」
「私はセレスです! バーサーカー賢者やっています! 好きな人は、私を愛してくれるカッコいい人です! よろしくです」
「…………」
だけど一体どうして、私はここにいるのでしょう……合コンなんて初めてだし、こんな雰囲気苦手なのですが……。
それにホントだったら、今頃城のみんなに食事を用意している頃なのですけど……。
「ヒュー、ミーティアちゃん、その可愛い子誰よ~、教えてよ~」
「ちょっと待ってって~ミグラムくーん! この子合コン初めてなの~、ほらほらリーちゃん、自己紹介~……」
「ヒュー! ミーちゃん頑張れ~!」
な、何かこのミグラムってお兄さん苦手デス……。
ト、トッテモ、コノ場カラ、逃ゲタイナー……。
「あ! ど、どうも、グロリアって言いマス。 そ、その、こんな所は初めてで、慣れてなくて……、よ、よろしくお願いしマス! はい!」
緊張の見本になるようなカチカチの自己紹介でした。
正直、場を乱しちゃったかなぁ……申し訳ないなぁ……。 あれ? 何か、男性の方々の視線がこちらに向いているような……。
「「「か、可愛い……」」」
「へ?」
あ、あの、可愛いって言ってくれました!?
可愛いって言ってくれましたよね!
だって皆さん顔を赤く染めてますし、でも、やっぱり褒めてもらうってちょっと嬉しいですね~キャ~~~! ん?
「ちょっと、グロリアさん、お手洗いに行きたくなりました……」
「うん、リーちゃん、私もお手洗い……。 どうせだったら一緒行きましょう……」
「え……? あの、何で右手で私の肩を強く握っているんですか、セレスさん? あの、なんで手を引っ張るんですミーティアさん? あの、なんで私を殺気満々でにらみつけるのですか!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁ、は、放してくださーい!」
そして、私はキョトンとする男性陣3人をよそに、二人に強く引っ張られ、店の裏まで連れていかれました。
…………。
「リーちゃんそれズルくない? 一発目で『可愛い』って言われる様狙ってるの?」
「へ? あの、何の事ですか?」
「グロリアさん、いけませんよコレは! あざと過ぎます! 天罰ものですよ、この行為は!? 魔王はやっぱり汚い!」
「セレスさん!? べ、別に魔王関係ないと思いますけど!?」
「だってリーちゃんズルいじゃん! 私たち、合コンのプロなのに、始めから『可愛い……』なんて言われた事ないんだよ! 」
な、何で私怒られているのでしょう……?
と言うか、私魔王なのに、何で正座させられているのでしょう……。
ぐ~~~……。
そういえば、夜ご飯まだでしたね……、お腹すきました……。
あぁ、ご飯食べたいです……ん? お二人ともどうしたのでしょう?
「セレスっち聞いた?」
「聞きました……」
「リーちゃん大食いなの……」
「なるほどミーティアさん……、分かりました……」
そして二人は互いを見ながらコクリと顔を動かすと。
「リーちゃん、さっきの事は許してあげるから、ご飯ドンドン食べない? 大丈夫、今回食べ放題だから、好きなだけどんどん食べちゃって! そうしていてくれたら、今回の合コンの費用、出してあげるから……」
「た、食べ放題なのですか!? 知らなかったです……。 ってホントに食べていいんですかミーティアさん、好きなだけ!?」
「いいの、ね、セレスっち」
「勿論です、グロリアさん……」
私の無邪気な声に、二人は邪悪な笑みを浮かべてそう言ってくれました。
邪悪ですけどきっと、大食いだと相手の受けが悪いから……そう思っているからの笑みでしょう、何となくですがそう思います……。
ですが、雰囲気を壊すのではないのかと不安です……、でも最近、他の子に気を使いすぎてご飯を満足するほど食べれていないし……。
でも、場の雰囲気を壊す事はいけないのです、いけない事なのです……。
…………。
「すみません! 魔牛ステーキ、パワフルソース添えを20人前に爆裂トマトのサラダを10人前お願いします! ふふ、もっと食べますよ~」
でも、食欲と『食べ放題』には勝てませんでした。
私は、自身の食欲に任せて食べ続け、今お腹は妊娠しているかのように膨らんでいます。
でも、それでも食べるのを止める事は出来ません、だって美味しいのだから。
特にこのソース、
そして、そんな私に男性陣も。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! すっげぇ妊婦みたい!」
「これでステーキ50人前、完食だぞ!」
「いけぇぇぇぇぇぇぇ! 店を潰すつもりで食べちゃえグロリアちゃ~ん!」
との声援を送っています、ふふ、私の魔王のカリスマに魅了されるのは、仕方のない事です、ふふ、さぁ男性の方々、私の魅力にひれ伏して大人しく従うのです!
「ちょっとドクターチェック……リーちゃんちょっとおいで……」
「グロリアさん、心配ですから、ね……」
ふふ、魔王たる私が心配ですか?
仕方ないですね、配下の願いは聞いてあげるものですから……フフ……。
…………。
「ねぇリーちゃん、ちょっとズルくない? 普通、合コンで大食いだと引かれるんだよ?」
「ミーティアさん、仕方ないですよ、魔王ですから例外なんです……フフ」
「もう魔王でもなんでも良いわ! ともかく私とセレスっちは、今日こそお持ち帰りされたいの!」
「そうなんです! 私も30代になる前に、バーサーカー賢者からお嫁さんにジョブチェンジしたいんです! その為にお持ち帰りされたいのです!」
ふふ、配下二人が私にこの様なお願いを口にしてきました。
確かに、ミーティアさんは30歳ですし、結婚を焦っているのは分かりますし、セレスさんもそれと同じ心境なのでしょう、ふふ、仕方ありませんね。
ここは、最強の魔王として、配下を導く必要があるのでしょう。
そして私は、二ヤリと笑みを浮かべ、二人に助言する、それは魔王である私だからこそ浮かぶ天才的な作戦でした。
「ならば、色気お感じさせるセクシーポーズを取ればいいのです!」
「なるほど!」
そして、私達は立ち上がり、合コンと言う戦場へ戻っていくのでした。
…………。
「「「さぁ行くぞ、行くぞ、行くぞ~! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、遂に100人前突破したぞ~!」」」
「ふふ、これからが本番ですよ! すみません、ステーキ30人前追加します!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
私は100人前と言う数字のステーキをお腹の中へ取り込みました。
ふふ、そんな私の魅力は、あからさまなセクシーポーズをとる二人より、素晴らしい様子の様で。
「ん? 二人とも、そんな胸を押し出してどうしたんだ?」
「バカ、きっとお花摘みだ、それ位察しててやれよ!」
「あ、俺たちはグロリアちゃんの様子見ているから、行ってきなよ!」
と言われる始末です、そして。
「あ、リーちゃんも行きたいみたいだから、ちょっと連れて行くね!」
「わ、私もご一緒に……」
そう言ってまた、腕を引っ張られ、店の裏へ連れていかれるのでした。
…………、
「あのさ、可笑しいじゃん? 普通あんなセクシーなポーズをしていたら、普通見るでしょ? 何でなの?」
「それは、私のカリスマが凄すぎるからでしょう!」
「リーちゃん、何か変な物食べた?」
ふふ、どうやら私のカリスマのカリスマが認めきれないようですね!
でも、仕方ありません、私、カリスマ抜群ですから!
「ところでどうしようミーティアさん……」
「どうしようセレナっち……」
ふふ、どうやら子羊たちが迷っているみたいですね……。
きっとどうすれば良いのか、答えを探している様子……、ここはカリスマを持つものとして、二人を助ける義務があるでしょう。
そして私は、二人に策を授ける、壮大で素晴らしい策を……。
「ならば、服を脱いで下着姿になるのです!」
「「え!?」」
「え!? ではありませんよ、お二人とも……、さぁ下着姿になるのです、さぁ、さぁ……」
…………。
「「「あと一枚、あと一枚、あと一枚! イヤッホォォォォォォォ、グロリアさんが150枚ステーキを完食したぞ~」」」
「ふふ、まだ終わりませんよ……。 店員さん、追加のステーキ30人前!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
私は遂に、150皿を完食したのでした。
ですが、魅了される者たちの高揚をここで終わらせるのは大変可哀そうです。
なので私は、更なる士気高揚の為に、200枚を完食を目指し……。
「あの、リーちゃん……?」
「ん……?」
「結局、私達、下着になっただけ、損なんだけど……」
「あ……」
そういえばそうでしたね、すっかり忘れてました……。
ですが……。
「ミーティアさん、セレスさん、それは仕方のない事なのですよ……、だって魔王のカリスマは、その程度ではどうにもならないのですから……」
「だから脱ぎ損ではないですか、グロリアさん!」
「そ、セレスっちの言う通りよ! さっきと同じじゃん!」
ふふ、私も甘いですね、つい自分のカリスマ性を計算に入れ忘れてしまうなんて……。
「ってアレ? ミーティアちゃん達いつ脱いだの?」
「いや、今グロリアちゃんがメインだからさ~、そういうのは後でだからさ~」
「てか、グロリアちゃんが凄いの分かってるから落ち着けって!」
そんな言葉に配下は。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! 手洗いに行くわよリーちゃん! ドクターチェックに行くわよ!」
「し、仕方ありませんね、チェックですから! さぁ行きますよグロリアさん!」
「ふふ、ミグラムさん達、しばし待っていてください! 配下に付き添うのも私の役目ですから……」
そしてミグラムさん達の「「「了解っス!」」」と言う息の合った返事を聞きながら、私は配下を連れ、店の裏へと向かうのでした……。
…………。
「ねぇリーちゃん、どうすれば良いの!? ねぇ、私達どうすれば良いの!?」
「そうですよ、グロリアさん! 私達はどうすれば良いのです! もうどうしようも無いですよ! もう断崖絶壁の上に立っている気分ですよ!」
「ふふ……」
いけませんね、二人は冷静さを欠いてしまっていますので……。
ですが私は魔王、世界を支配し導く者。
迷える配下を導かねば、魔王として失格でしょう。
なので、全知全能たる私は、配下の為に、究極の策を授けるのでした。
「ならば、全裸になればいいのです……」
…………。
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! 後一皿、後一皿、後一皿、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、グロリアさん、いや、グロリア様が200皿完食なされたぞ~」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
「「ヒクッヒクッ……」」
ふふ、私のカリスマは二人の裸程度ではどうにもならなかったようですね!
いつしか町中の者たちが私のカリスマに釣られ、個室の前は人々の顔で埋め尽くされています。
そして二人の配下は両手で胸と股を押さえ、シクシクと泣いています。
ふふ、お持ち帰りされる事を夢見て街にやって来た二人は結局、私のカリスマによってその夢を絶たれてしまった訳ですよね……。
ならば、その原因たる私には、そんな哀れな二人に手を差し伸べる義務がありますね。
つまり!
「さて二人とも、今日は私がお持ち帰りしてあげましょう……」
「「え!?」」
私の優しさに驚いたのか、哀れな配下二人は、驚きのあまり、理解が追い付かない様子でした。
そして。
「さて、私は配下をお持ち帰りします! 私のカリスマに釣られた皆さんが末永く平穏に暮らせるように願いますよ!」
そして私は、裸の二人を抱えて店の外に出ると、空を飛んで城まで戻るのでした。
…………。
うぅ……。
昨日、何があったのでしょう……。
確か、ミーティアさん達に合コンに無理やり連れていかれたのは覚えているのですが……。
私はいつの間にか寝ていたベットから体を起こすと。
「あれ? おはようございます、ミーティアさん、セレスさん。 昨日一体何があったのですか?」
ちょうどドアの入り口にお二人が立っていたので、私は昨日、一体何があったのか聞こうと思い、お二人に尋ねます。
すると。
「はい、私達はグロリア様にお持ち帰りされ、グロリア様を崇める使徒になりました!」
「へ?」
あの、一体何を言っているんですか、セレスさん……。
あの、セレスさん、あんまりそんな事ばかり言っていると今まで崇めていた神様から怒られますよ……。
でも一体何がどうなって……、聞くしかなさそうですね……。
「えっと、お二人が何を言いたいのかよく分からないのですが……」
「では、わたくしミーティアが説明いたします。 私達はカリスマであるリーちゃん様にお持ち帰りされ、カリスマの洗礼を受けたのです!」
「カリスマの洗礼!? いったい何ですか、それは!?」
「カリスマの洗礼はカリスマの洗礼です!」
えーっと……、カリスマがどうとか言うのが、何か……そういえばステーキを結構食べたら何かそんな事を思った様な……えーっと……
・・・・・・・・・。
もしや……、あのクトゥルーニンニクが入っていたのでしょうか、昨日のステーキのソースに!?
確か頭がおかしくなるとか、ちょっとしたブームとか言ってましたし……。
私は体に寒気が走り、体の震えが止まらなくなりました。
いったい記憶の無い間に何をやったのだろうと……。
そんな冷静さを失った私に。
「さぁグロリア様、私にカリスマの洗礼を……」
「リーちゃん様、私にもカリスマの洗礼を……」
そんな言葉を私にぶつけられ、そして昨日の合コンでの記憶が脳内へ流れ込んできた私は遂に。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな叫び声と共に天井を破壊し飛びだしていきました。
どうして、どうしてこんな目に……。
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