1月18日(金)

中学校の教室にて。


「あ、今日の給食ラーメンだ。やったね」

「運んでる途中に食缶開けないで」

「あぁごめんごめん。給食は学生のモチベじゃん。午後起きるか寝るかは、ここにかかってると思うね」

「よいしょ……っと。それ、食べたいのだったら寝るよね、午後」

「まぁ、どうしてもそうなっちゃうよねー」

「わかる。わたしもご飯出る日は寝るから」

「寝る頻度高いな。アタシにツッコませないでよ」

「分担もしてないでしょ。暇ならお皿とって」

「はい」

「いや、ご飯のお皿じゃなくて」

「あぁ、食缶のね。もう食べたいのかと思った」

「なら盛って渡して。食べるから」

「怒られるって。どうしたの、そんな腹ペコキャラだっけ。はい、皿」

「わたしはずっと変わってないけど。皿どうも。おたまおたま」

「おかわりとかいっつもしてないじゃん。はい、おたま」

「しないよ。うちのご飯は白田くんの支配地域でしょ。おたまどうも」

「……支配地域?」

「知らないの? うちのクラスの給食は四象五方の大食漢によって牛耳られてるの」

「そんな妙な風習は知りません」

「牛乳の青山、食缶の赤城、ご飯の白田、付け合せの黒井、そして小皿の黄倉。このクラスで最も大食いの五人が、それぞれが不干渉の条約の結んだ上で、担当の給食を好きなだけ食べて良いことになってて、他の人間がおかわりするときは彼らに申告して許可を得なくちゃならないんだ。たとえ教師であろうと」

「教師であろうと!?」

「無視したら食べられるよ」

「そんなしょっぱい都市伝説みたいな話信じられるかぁい! 第一、五人とも普通にいい人だし。公共の給食を私物化するようなことしないよ、きっと」

「聞いてみたら。コミュ力おばけなんだし」

「おばけじゃないよ。アタシのコミュ力は愛と勇気で出来てるから。むしろあんぱんだね」

「じゃあコミュ力あんぱんなんだし」

「正解」

「えぇ……」

「けどいいや。アタシは信じる。えっと、四象五方の大食漢ね。これ考えたの誰」

「坂島さん」

「あぁ、あの厨二病の」

「あけすけだなぁ」

「ほっぺたにタトゥーシール貼って学校来てるんだから、アタシより坂島さんの方があけすけだよね」

「まぁ行動はね。毎朝生徒指導の先生とバトルする体力には感心するよ」

「坂島さんはあれ本当にバトルだと思ってるから」

「強かだ」

「凄いのは厨二病なのにみんなに受け入れられてるとこだね。さっきの四象五方しかり」

「まぁ愛されキャラってことでしょ」


 給食準備ができた頃に、うちのクラスは少し変だという結論が出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る