1月16日(水) 

 中学校の教室にて。


きたる昼休み、さあ遊ぼう!」

「どこで」

「外。雪合戦しようよ」

「ん、小学生かな?」

「違うよ。中学三年生だよ」

「やだよ、今日ローファーだし」

「靴なんかに縛られてたら楽しく遊べないよ」

「楽しく遊ぶために靴選んでるんだけど」

「ちぇー、長靴くらい学校に置いといてよー」

「また横暴な」

「まぁ冗談として。でも給食後のこの二十分、無益に使い捨てるわけにはいかないじゃん」

「志高いな」

「そんなわけで、外で雪合戦しようよ」

「おかしいな。さっき行かない方向で話がまとまったと思ったんだけど」

「靴ならそのへんの子に借りればいいじゃない」

「そんな不必要なコミュ力は持ち合わせてないよ」

「じゃあ借りてきてあげる。ちょっと待ってて」

「待つのはあんただ」

「何?」

「今日わたし、手袋持ってきてない」

「それなら大丈夫。アタシ二つ持ってる」

「何でこんなときばっかりそんな用意が良いの」

「じゃあ行ってくるね」

「待てぃ」

「何さ」

「頭を下げるから、雪合戦はやめよう」

「えー、そんな雪合戦嫌い?」

「好きではないかな」

「どのあたりが?」

「寒いし濡れるし疲れる」

「軟弱なこと言ってんじゃないよ! これだからインドア系は、アタシがその性根、叩き直してやんよ!」

「憤然と長靴を借りに行かないで」

「良い作戦だと思ったんだけど」

「あともう一つ、嫌な理由をあげる」

「うん」

「めっちゃ、目立つ」

「……?」

「考えてもみてよ。十五にもなって楽しく校庭で二人雪合戦に勤しんでる風景。受験疲れちゃったか精神年齢未成長の二択だよ」

「そうかなぁ。いいじゃん、無邪気っぽくて」

「年相応の方法で示していこうよ」

「年相応の方法って?」

「え……何だろうな」

「無邪気さを示す十五の乙女らしい方法、思いつかないの?」

「いや、わたしたちが乙女かどうかは知らないけど……」

「乙女だよ! 辞書引きなさいよ!」

「あーうん、形式張った意味では乙女だね。あんたに辞書引きなさいよって言われるとちょっと凹む」

「普通に失礼なこと言うのやめてもらっていい? 形式張った意味ってどういうこと?」

「真顔で指摘するのもやめて。謝るから。もっと俗っぽい意味かと思ってただけ」

「許す。俗っぽい? 何、保健体育的なそういうアレ?」

「違う……まぁ気にしないで」

「ふぅん。で、思いついた?」

「いや、思いつかない」

「じゃあ雪合戦だね」

「くそぅ強硬派だなぁ……いいや、わたしは付き合わない。あんたにどれだけ推されようとも、雪合戦にはなびかないよ」

「えー、じゃあ何したいのさ。頭ごなしに否定しないで代替案をおよこしよ」

「頭ごなし……? あぁ、確かに。あんたの主張を聞いてなかった。何で雪合戦したいの?」

「寒くて濡れて疲れるから」

「よし却下」

「ですよねー」

「代替案か、そうだなぁ……図書室で本でも読もうか」

「何その運動要素まったくない提案。いいけど」

「いいんだ……」


 二人で「ミ○ケ!」読んだ。

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