第13話 田舎令嬢と精霊
結局朝までみっちり「淑女矯正コース」を受ました。頭から足先まで常に張り詰めていたから身体がガチガチでございますわ。
さて、それでは今日の目的を果たしに行きましょう!
「殿下おはよう!魔法教えて!」
「昨日の夜も同じ様に入って来ませんでした!?」
扉を勢いよく開くと読書中だったのかメガネをかけている殿下を発見。うるせぇ!さっさと魔法を教えろ!
「昨日の続きだからね!早く魔法を教えろ下さいませ!」
「なんか言葉遣いおかしいとおもうですが…」
「淑女矯正コースを受講するといつもの言葉遣いとお嬢様しゃべりが混ざり合っておかしくなり遊ばれられまするわよ!」
「それって大丈夫なんですか!?主に脳みそ!?」
遠回しにアホ呼ばわりされてしまったであります。まぁあんまり頭が回ってないのは事実だけど。
「いつものことなので問題ねぇでありますわよ!さぁ!魔法を!」
「と、とりあえず落ち着きましょうよ!?そんなおかしな話し方されるとこっちが混乱します!?」
〜田舎令嬢休憩中〜
「ふぅ…ようやく落ち着いた…」
うちにあるやっすい紅茶を飲んで1時間ほどのんびりするとなんとか通常に戻った。いやー相変わらず母さんの淑女教育は脳髄にきまるなー。
「それはよかったです…あの話し方が移ったらどうしようかと…」
「お望みならもっと続けて差し上げますわよで候」
「それは何もかもが違う!」
最初は真面目で少し変な人だと思ったけど以外とリアクションも面白いしいいやつだな殿下!紅茶淹れてくれたし。
「さて、それで魔法はどうやってつかうんだ」
「そうですね…まず確認したいのですが、アルトリア嬢は魔力はありますか?」
「わからん!」
「えぇ…」
おいこら、そんな残念な子を見る様な目で見るな。
「うちにある本には基本的なことしか書いてなかったし、何よりうちの家族全く魔法使わないからよくわからん!」
「あぁなるほど…それなら少し試してみましょう」
そう言うと王子は自分の鞄から何やら取り出した。なんだこれ?綺麗な水晶玉みたいなやつ?
「これは?」
「これは魔力を測定するための水晶です、自分がどの魔力を持っているのかを図るためのものですね、他にも魔力の有無が分からない人のために体内に眠っている魔力を引き出して測定します」
「おお!すごい!でも何で殿下がこんなもの持っているんだ?」
「ここに連行される前に兄さんの研究室にいたんです、その時に持っていたこれも一緒に持ってきてしまって…」
「殿下のお兄さんってことは第1王子のアインズ殿下か?」
「そうですけど…兄さんの事は知っているのですか?」
僕の事は知らなかったのに、と言いたげな目線を向けられた。
「う、家にあった本がアインズ殿下の出された本だったんだよ、だから知ってたんだ…ごめん」
アインズ殿下は魔法の研究家として有名で5歳のころには全魔法の最上級魔法まで修めたと言われる天才魔法使いだ。その活動の一環でさまざまな魔法の本を出版している。家にあった本もその一つだ。
「ああいや、別に気に障ったわけではなくてですね、王族の名前を覚える機会のなかったあなたが兄だけ知っているのを疑問に思っただけです、そういえば何冊か本を出していましたね…」
「それで!この水晶に触れば魔力があるかわかるんだな!」
「ええ、兄が作った最新式の水晶ですからね、性能はお墨付きです」
よし!男の子ならだれでも一度は夢見るカッコいい魔法使いへの第一歩だ!
しかし、いつまでたっても水晶はうんともすんとも言わない。もしかして…。
「これって、俺には魔力がないってことか…?」
「残念ながら、そのようですね」
ちくしょう!そりゃそんな気はしてたけどさ!兄貴たちも親父も全く使わなかったからもしかしたら俺も魔法つかえないのかなーとか思ってたさ!けど悔しい!せっかくファンタジーな世界に転生したのに!
「…つまり、昨日のあの動きは魔法や魔力による補助を全く使わないで行ったということに…やっぱりこの家の人たちはなにかおかしいひとたちなんじゃ…」
「…なにかぶつぶついってるみたいだけどさ、魔力を使わないで魔法を使えたりしないのかよ殿下…」
どうしてもあきらめきれない俺は殿下に聴いてみた、まあそんな都合のいいことなんてあるわけ…
「ありますよ」
「だよなーってマジ!?」
言ってみるもんだな!サンクスファンタジーの世界!
「その方法って!」
「精霊と契約すればいいんです、そうすれば魔力がなくても魔法を使えますよ」
「?でも魔法って精霊に魔力を渡さなければ使えないんだよな?契約しても対価を支払わなければ魔法は使えないって言ってたし」
「契約の場合は対価を支払わなければならないと言いましたが魔力を必要とするとは言ってませんよ」
?????
「つまりどういうことだってばよ」
「例えば、毎日木箱いっぱいのリンゴを献上する代わりに契約をしてください、とか別のもので代用することもありますね、他にも月に数回神殿で儀式を行うとかも可能です」
「なるほど!」
「しかしあまり厳しすぎることを条件にすると達成するのが難しくなります、そうなると精霊の怒りを買い、二度と契約することができなくなったりひどい時には命を失うこともありますね」
以外とリスク高いな、しかしこれしか手段がないならおれはこれに全力をかける!
「よし!おーい精霊さんやーい!毎日遊んでやるから契約してくれー!」
「ブッ!あ、アルトリア嬢、精霊は普段人から見えなくなるように認識阻害の魔法をかけていますし、そんな軽々しく呼び掛けに応じるような性格では…」
『本当?それなら僕が契約してもいいよー』
「え!?」
「何!?」
いきなり虚空から声が聞こえた、と思ったら空間が歪み、その中心から何かが出てきた。
徐々にその姿がはっきり見えるようになっていき、それは黒色の小さな竜の姿として現れた。
「人の前に出るのは初めてー、僕は闇の精霊だよー、よろしくねー」
「な」
「な」
「「何が起こった(んですか)ー!!!!」」
二人揃って絶叫した、その様子を見て黒い竜は不思議そうに顔を傾けたのだった。
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