彼女の本音

「お前は……本当は何を思っている?」


これは賭けだった

ひとつでも言葉を間違えれば今の白石にあの世に引きずり込まれる可能性すらある


「何を伝えて、何がしたい」


幽霊相手には頭の中で言葉を並べるだけで会話ができる

相手の怨み具合によっては頭痛がするほど酷い時もあるがこいつはそうじゃない

だからあの時のが本音じゃないのが分かったんだ


「私ね…もう二度と私のような人を出したくないの」


心からの言葉だろう、それが嘘には聞こえなかった

俺は何を伝えられるのだろう

苦しんで自ら息絶えた少女の本音を

どうしたらこの馬鹿だらけの学校に伝わるのだろう

いじめなんてなかったと言い張る教師

いじめじゃないと言い張る生徒

白石が亡くなっても数日経てば元通り


こんな腐った学校に俺が白石の言葉を伝えても何も変わらない


「そうだ……白石、力を貸してくれないか」


一つだけあった

白石の力を借りればできること

トラウマを植え付けるかもしれない

でもそこまでしないと分からないこともある

白石は不安そうだが

これも彼女を成仏させる為…この腐った学校を少しでも良くする為

二度とあんな事件が起きないようにするため

やれることならやるしかない


実行は 明日の全校生徒が集まる朝会の時間だ


下手をすれば俺が退学になる可能性すらある危ない綱渡り

でもこの問題が少しでも多くの人にいい方向で影響があるのなら

数%の確率で何かが変わるかもしれないのなら俺は全力でやるだけ


「どうしてそこまで私のために…」


「俺なりの償いとだけ言っておく」


過去に 助けられなかった人達がいるから

俺は、白石すら助けられなかったから

落ちない血を被り、罪を背負って生きると決めているんだ

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