怖い雨

 

 最近仕事が忙しい、注文が多いのだ。

「スーパーのマグネットにもロゴを?」

「広告とかを壁に貼っているだろう、あれ磁力が強い良品なんだ、取られることが多いらしい」

「良識があるんだか無いんだか」

みんなでぼやいても始まらない、量がすごい! 数えるのも社員総出で大変だ。地道な作業は嫌ではないが、さすがに疲れた上に帰りが雨は堪える。その日は

「よかった、雨があがった」と言ってしまい

「あなたからそれが聞けてうれしい」とみんな急いで会社を出た。

 

 もう外は真っ暗だが、雲行きが怪しかった。ゴロゴロと遠くで聞こえている。ピッタリとしたショートのレインブーツは歩きやすくていい、この靴史上最速で行けば、濡れずに家に着けると、中学校近くの川の橋を通っていた。ここは昼間も朝も、川の両側に整備された遊歩道に散歩の人が多いが、雨上がりの夕食時、歩いている人は全くいない。

が少し離れた所に黒い集団が見えた。学生服、中学生か、どう見ても部活の帰りという感じでは無さげな、怪しい雰囲気だった。笑い声が聞こえ、そして大きな声


「どうするこの傘」

「もういらなくねー、川に捨てれば」


私はぎょっとして彼らを見、直後にパンと傘を開く音がした。私の目に飛び込んできたのは、外灯に透ける薄いアイボリー、マスキングテープ調の周りの模様


「待って!そんなことしないで!」


慌てて走っていった。びっくりしたのはその集団だ。固まったように傘を持ったままだった。

「その傘、君のじゃないでしょう! 」自分がどんな迫力でそういったのかはわからないが問い詰めた。

「返して、持ち主に返すから。それあの子に大事にしているものなの、自分でカビを漂白剤でとってるのよ」

一目見てわかるほど全体的にきれいになっている、家に防水スプレーもあると言っていたから、雨粒もきれいに落ちている。そう言って一旦私は落ち着いた、だが多少恐怖も感じ始めた。四、五人の身長は私と変わらない男の子だ。でも

「駄目よ、凛としていなきゃ」

強い態度を保たなければと思った。すると


「何をしよるんか、お前たち!! 」


叫ぶように遠くから男の人の声がする。「わ! 」と言って傘をその場に投げ捨て、一人の背の高い男の子を残して行ってしまった。私は急いで傘を拾って、いつものように生地になるべく手が触れないようにしてたたんだ。それが終わったと同時に大きくため息をつき、彼女の傘を抱きしめたまましゃがみこんでしまった。


「大丈夫かね」

どこかで聞いた声だと思ったら、朝の交通指導の人だ。

いつものベストが、車のライトでキラキラと光っていた。

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