第17話 百合さんとのデート 一
向日葵とのことがあってから、一ヶ月が経過した頃。
私は学校が終わるとすぐに家に帰り、自分の部屋に行くために駆け足で階段を登りきった。
向日葵とは今でも友達として仲良くしている。
毎日朝は高校に一緒に登校して、帰りも一緒に帰っている。
前と変わらず仲良しだ。多少の壁は感じたりはするけれど、今でも友達ってところは一生変わらないのだろうと思う。
部屋に入ると私は、自分のベッドに勢いよく座り鞄からスマホを取り出した。
向日葵とのことから一ヶ月、クリスマスまで、残り一ヶ月そんな頃に私は、百合さんにメッセージを送った。
『百合さん今大丈夫ですか?』
百合さんからはすぐに返事が、返ってきた。まるで私がメッセージを送るタイミングを知っていたかのように。
『うん大丈夫だよ!』
『単刀直入に言うと、私とクリスマスにデートしてくれませんか?』
送った直後に私は流石に単刀直入すぎたか? と若干の後悔をしながらも百合さんの返事を待っていると。
ピコーんとスマホがなった。
『私と?』
『はい百合さんと二人きりで』
『向日葵には伝えずに?』
『向日葵には私が事前に色々伝えてあるので大丈夫です』
そう色々だ。
百合さんに誘われても断ってほしいこと、それから私がその日に告白すること。
流石に告白することを向日葵に話す時には、緊張した。
緊張以前に罪悪感と申し訳なさでいっぱいになったが、向日葵は笑って言ってくれた。
「頑張ってね」
と。
その一言だけだったけれど私は、ありがとうという気持ちで心がいっぱいになった。
『私は大丈夫だけど』
私はその百合さんのメッセージを見た瞬間に、立ち上がってガッツポーズを勢いよくしてしまった。
『ほ、ホントですか?』
慌てているのがバレバレのそのメッセージは、百合さんはどう捉えていてくれるのだろうそんな想像をして、微笑みが止まらなかった。
『うんホント』
『それじゃあ詳しい時間などはまた後ほど送りますね』
『了解!』
最後に私をメッセージを送った。
『私⋯⋯とっても楽しみです!』
『私も楽しみだよ!』
そうして私と百合さんのメッセージのやりとりは、終了した。
翌日、向日葵にその後の百合さんの様子を聞いてみると
「お姉ちゃんの様子? 私に聞いてきたよ『向日葵はいいの?』ってなんか目うるうるさせながらね。『私は大丈夫だから二人で楽しんできて』って言っといたから心配いらないと思うよ』
「ごめんね。向日葵」
謝るべきではないのは、わかってはいるけど私は、謝ってしまう。向日葵をふったことを誤りだと一瞬でも思いたくないから。
「いいよ。もう謝らなくても。それとも葵私と付き合ってくれるの?」
向日葵のその言葉に私は、すぐに返事をする。
「ごめんそれはできない」
「ふふっ。葵、断わるの早すぎ。もうちょっと悩むフリでもしてくれたらいいのに。わかってるよ無理なのは」
すると向日葵は、突然走りだした。
どんなにどんなに私が追いかけても、向日葵には追いつけず、ずっと私よりも前を走っている。
まるでその表情を私に見せたくなくて、無理に早く走っているような気がした。
それから一ヶ月が過ぎた、クリスマス当日私はあの分かれ道に、予定の時間よりも三十分も前に到着してしまった。
私が百合さんを待ちながら、自分の服装が変ではないかの最終確認をしていると、スマホがピコーんと鞄の中から鳴った。
私はスマホを取り出し、画面を見てみると向日葵からメッセージが届いていた。
『今お姉ちゃん家出たから、もうすぐ着くと思うよ』
という文章だった。
私は向日葵に対して、こんな時にまで教えてくれてごめんという気持ちでいっぱいだった。
『ホントいつもありがとう』
というメッセージを送るとすぐに返信が、返ってきた。
『もしお姉ちゃんにふられたら私のところに来てもいいからね(笑)』
私はこのメッセージに返信ができなかった。
なぜなら(笑)が私には、涙と悲しみにしか見えなかった。
ちゃんと断った。だけどまだ思い続けていてくれる向日葵に、私はなんと返事をしたらいいのかわからない。
私のこの行動を甘えと言う人もいると思うけど、しょうがないじゃん! だってわからないんだもん。
友達を捨てたくはないけど、私は好きという気持ちを百合さんに伝えたい。
伝えた後に何があろうと私は気持ちを伝えたい。
けどその結果私は、友達を傷つけ続けてしまっているのもわかってる。わかってるけど。
どうしたらいいかはわからない。
そんな矛盾じみたものが私の心を、永遠とグルグル回っていた。
すると私を誰かが呼んでいる声が聞こえてきた。
「おーい葵ちゃん。大丈夫?」
私を呼んでいたのは、待ち合わせ場所に到着した百合さんだった。
私は慌てて返事をする。(無理矢理テンションを戻して)
「あ、はい大丈夫ですよ! 百合さん早いですね」
すると百合さんは笑みを浮かべて、ちょっと私をバカにすように言う。
「葵ちゃん、三十分も前にここにいるのに、早いですねはないでしょー」
それもそうだった。
先に来ている人が言うセリフではない気もする。
百合さんはそのままのテンションで、質問に移っていく。
「それで、今日はどこに行くの? 当日まで秘密って言ってたけど」
私はそれを聞いて、今思い出したかのように、鞄から一枚のパンフレットを取りだした。
「今日はここに行こうかと」
そのパンフレットに書かれている場所は、遊園地だった。
それほど大きくはない遊園地だけど、やっぱりクリスマスと言ったら遊園地という、安易な思いつきで、それほど遠くはない遊園地を提案した。
「おおー遊園地か、いいねークリスマスって感じ」
デートという言葉がなくなっているのが、ちょっと悲しくはあったけど、それ以上に百合さんが喜んでくれているのが、私は嬉しかった。
そんな百合さんを見ながら、私は歩き出す。
「駅向かいましょ! まだ時間は余裕ありますけどゆっくり歩けるのは、楽しいですし」
「そうだね、じゃあ駅向かおっか」
百合さんと私は隣同士で、歩きだした。
しかしそんな道中、不幸だけど私にとっては幸福なことが偶然起こった。
いやもしかしたら無意識で、私がやったのかもしれないけど。
それは駅に向かう道中で、私がスマホを落としてしまったところから始まった。
落としたスマホを拾ってくれたのは、百合さんだったそこまでは、よかった。
その画面に写っているホーム画面の画像が、文化祭の時の百合さんにしてあるのが問題だった。
当然百合さんは照れながらも怒ってくる。(本当に怒ってるという感じではない)
「葵ちゃんなんで私のメイド姿を、ホーム画像にしてるの?」
私は「えへへ」と手を後ろに回しながら適当に誤魔化そうとしたが、百合さんにはこの手は効かなかった。
「ごまかそうとしないで、ささっと違う画像にして!」
そう言いながら百合さんは、私にスマホを渡してくる。(多少強めに)
私は素直に変えようとした。
スマホを受け取る瞬間までは、しかし受け取った瞬間に私は閃いた。
これで百合さんと、交渉ができるのではないのか? と。
私は早速交渉を始めてみる。
「百合さんー写真、変えて欲しいですか?」
「うん変えて欲しい」
「だったらー百合さんのー高校の頃の写真ください!」
「葵ちゃん、いつのまにそんな意地悪になちゃったの? あった時は昔の向日葵みたいに健気で可愛かったのに」
百合さんは顔を俯いて、本当に悲しそうに言った。
私は今すぐにでも、変えますって言いたくなるほど、可哀想ではあったけど、私は引かない。
高校の頃の写真が欲しいから。
私はもうちょっとだけ、百合さんを煽ってみる。
「いいんですか? 高校の頃の写真を私にくれれば、私はホーム画面を違う画像にしますよ?」
すると百合さんは、俯いていた顔を正面に戻して、真剣な表情で私に言う。
「わかった。写真はあげる。けど一つだけ約束して。そのあげた写真は絶対にホーム画面にしたり広めたりはしないでね!」
私は満面の笑みで、返事をする。
「わかりました!」
私がそう返事をしたのを聞いて百合さんは、スマホをいじりだし、写真を私に送った。
その写真の制服姿の百合さんは、素直に可愛いと言える可愛さがあった。
そんなやりとりをして、私達は電車に乗っていく。
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