第4話 帰り道
雑談も終わり
玄関で靴を履いていると、リビングから百合さんが出てくる。
「もう帰るの?」
「は、はいもう結構遅い時間なので、帰ります」
私は突然出てきた百合さんに驚いてしまって、声が裏返ってしまった。
そんなことは気にせずに向日葵は雑に喋りだした。
「あの分かれ道まで、葵送ってくるから」
と言いながら向日葵は家のドアを開け、外に歩き出していく。
私もそれを追いかけるように外に出ていく。
百合さんは「じゃあねー」と言いながら手を小さく振っていた。
「はい、お邪魔しました! 色々ありがとうございました」
私は挨拶をしてドア完全に閉じて、向日葵を追いかける。
分かれ道までの道中私は、百合さんを見て思い出した気になっていたことを向日葵に質問した。
「なんで百合さんが、向日葵のお姉さんって教えてくれなかったの? それに私向日葵にお姉さんがいるなんて聞いたことなかったよ」
向日葵は困った表情をしながらも答えてくれた。
「お姉ちゃんがいることを言ってなかったのは単純に、言うタイミングがなかったのもあるし、それに昨日までお姉ちゃん家にいなかったからさ」
いなかったって? と私が驚きの表情をすると向日葵はちゃんと答えてくれた。
「大学の方の家で一人暮らしをしてたんだけど、昨日突然帰って来たんだよ。私が帰ってきた理由聞いても教えてくれなくてさ」
そっかまぁ大人には、大人の悩みがあるのだろうと勝ってに納得をして、私は向日葵にもう一つは? という目線を送った。
向日葵は私の目線の意味を感じとったのか、一回咳払いをして喋りだす。
「もう一つはホントに単純に葵の驚いてる姿を見たかったただそれだけ」
向日葵は微笑んだ後に言葉を続ける。
「ばっちりだったよ驚いた葵の顔、可愛かった!」
私は向日葵の笑顔に思わず照れてしまうが、照れを隠すように向日葵の体を数回優しく叩き、笑顔でお礼を言った。
「ありがと向日葵、百合さんに合わせてくれてホントにありがとう」
そう私が言うと向日葵も照れを隠すように喋りだした。
「いいよ別にお礼なんて、ただ一つ私からも聞きたいことがあるんだけどいい?」
私は何も考えずに「何?」と聞き返した。
「葵がさお姉ちゃんに名前と苗字聞いたときさ、葵何も気づかなかった?」
向日葵は下を俯きながら、少し暗めの声で質問をしたきた、私は動揺してしまい「ど、どういうこと」と声を震わせた。
「だからね、私! 私の苗字!」
向日葵は自分自身を指差しながら強めの口調で答えを返した。
私は向日葵の苗字を考える、頭をひねり考える、すると頭の中に一つの苗字が浮かび上がった、その苗字を私はすぐに口に出した。
「白石、白石だ! 百合さんと一緒の苗字だ」
私はそれに気づくと向日葵の方向に振り向いた。
すると向日葵はやっと気づいたかと言わんばかりに、ため息をついた。
「気づくの遅いよ、葵」
「ごめん、向日葵は向日葵だったから苗字とか気にしたこと、なかったからさ」
私は笑顔で答えを返した、すると向日葵は「なにそれ」と笑いながら呟いた。
「葵はもうお姉ちゃんしか見てないんだね」
向日葵は私に聞こえないぐらいの声の大きさで何かを呟いた。
私が「なになに?」と聞くと勢いよく向日葵が抱きついてきた。
「私、私ね」
向日葵はそこで俯いた、その声は震えていて、顔にも涙が一粒垂れていた。
「私、二人のこと応援するね」
向日葵の顔には笑顔と涙が同時に存在していた。
向日葵はとても悲しそうに笑っていた、まるで本心を無理矢理押し殺すように。
私はなにも声をかけられなかった、向日葵は私から体を離すと分かれ道まで歩きだした。
分かれ道までたどり着くと向日葵は足を止めた。
「葵また明日、ここで待ってるから」
向日葵の顔にはもう涙は見えなかったが、嘘の笑顔が残っていた。
「うんまた明日ここでね」
私は笑顔を作りそう言った、それ以外の言葉が出てこなかった、なぜなら向日葵が嘘をついている理由が私にはわからなかったからだ。
向日葵が自分の家に帰っていく、本当はここで向日葵に「ホントはなにが言いたいの」と聞くべきだったのかもしれなかったが、私は黙って自分の家の方向に歩いていく。
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