最終章10 『神楽流真の覚醒――『超』の型』

「きっはっはっは。どうしましたかぁ……カグラさぁあん?! 私に対して何かしましたかぁ?! 全然、痛くありまっせぇんっ!! 無駄……無駄なんですよぉっ!! カグラすぁあん!! きゃーっはっははっはは」


「――カグラ、お前の攻撃は確実に相手に通っているにゃ。猫箱暴きの魔女の名に置いて、異端審問官ハインリヒ・クラ―マーの死をしたにゃ」


「……観測者に死を観測され、何故奴は死なない?」


「あいつが……無敵の異端審問官と言われる理由が分かったにゃ。あいつの不死身の理由は――痛み分けサクリファイス


「きっひっひひひひ。さすがは名探偵のデュパンさんですねぇ……。きっひっひひひひ。ご明察めいさつですっ!」


「その名の通り……自分に受けたダメージを他の人間に強制的に押しつけ、肩代わりさせる悪辣なる能力。この痛み分けサクリファイスの発動条件は、自発的に自分が身代わりになって死ぬと望む者ではなくてはならない。クラーマーが妄信的な狂信者達を求める理由の一つがこれにゃ」


痛み分けサクリファイス?」


痛み分けサクリファイスは、自分に受けた傷や死や病気を、他者に無理矢理押しつける能力」


「そうでぇす。私を倒すには、700億の戦艦の我の信者を全て殺しきる。つまり数京を超える回数で私を殺しきらなければならないという事でぇすっ!! その意味が分かりますか? きっひっひひひひ。無駄なんですよぉ!! たった一度私を殺しただけで、そんなにへたばっている程度じゃ。全然ダメでぇす!」


(異端審問官ハインリヒ・クラ―マーを数京回殺す……――)


いな――できる。何故ならなぜなら俺は――魔を祓うはらう一族、神楽流の最後の末裔まつえいであり、神楽流の体現者。そこに魔がある限り滅しきる事が可能だ。それが――神楽流の真の後継者の役目」


「カグラ。――それはお前の望む真実虚構と、残酷なる事実現実を理解した上で――なお、その分の悪い解釈を突っ張り続けるというにゃ……?」


「ああ――俺は、千年の時を経て完成された最後の神楽流の体現者。そして――最強の転生者だっ!!!」


 猫箱の開封の時と同じような万華鏡の

 様に変化する虹光に包まれる。


 真実虚構だけでは辿りたどり付けない、

 事実現実だけでも辿りたどり付けない、


 真実と事実の両方を理解した今こそ使える

 これは――!!!


「猫箱暴きの魔女デュパン――事実を司るつかさどるお前に見届けて欲しい。これから起こることは全て事実――猫箱の開封を!!!!」


「――了解にゃ。開け――猫箱!!! 全ての事実を観測するにゃあっ!!!」


 世界は白金色の光りに包まれる。

 万華鏡のように変化するプリズム色と、

 白金色のまばゆい光に世界が包まれる。


「きゃーっはっひひひひゃあ。そんなピカピカ光ったって無駄だあっ!!」


 クラーマーは怪力無双の万力の力をもって

 カグラに殴りかかる。


 ――カグラはこれを避けない


 の発動。……30 cm

 発動圏内。そして……。


「神楽流水浸すいしんの型――空木うつぎ


 クラーマーの拳に、掌底しょうていを当てる。

 全身の穴という穴から血を吹き出し、即死。


 ――だが、もちろんすぐに蘇るよみがえる


「神楽流――『超』の型――彼岸花ひがんばな


 全身を金剛石のように、プリズム色に

 変化する輝く解釈の光が体を包む。


 この解釈の力の中で、カグラが真の意味で信じた真実虚構

 事実現実となる。そして――カグラの心に今は、一点の

 曇りもない。残酷なる現実を経て、至った真なる境地。


「神楽流『超』の型派生――究極奥義、八連結究極奥義シームレス・ヘル八大地獄演舞ヘブンリー・アーツ


 神楽流には存在しない技だが、もはや関係は無い。

 カグラが振るう技は、則ちすなわち神楽流に組み込まれるのだから。


等活地獄拳ミリオン・ブロー


 一秒間に百万回の拳を叩きつけるたたきつける拳。

 この技の発動中は、相手は反動で後ろずさることすらできない。


 一回殴られるごとに、異端審問官ハインリヒ・クラ―マーは

 爆発四散するが、すぐに新たな狂信者たちの体と入れ替わる。


 ――クラーマーは百万回死んだ


黒縄地獄斬ディメンショナル・スラッシュ


 光速を超える手刀が、クラーマーをそこにある

 空間ごと、切り裂き、極限定的な範囲であるが、

 多元世界に通じる次元の亀裂を生み出す。


 ――クラーマーは一千万回死んだ


衆合地獄槌アンブレイカブル・ハンマー


 クラーマーの足を掴みつかみ、まるでづち

 ふるうように、何度も何ども地面に

 光速を超える速さで叩きつけるたたきつける


 ――クラーマーは一億回死んだ


叫喚地獄潰しノブレス・オブリージュ

 

 顔面をただ、連続で踏み続ける技――。

 光速はとっくに超えているが、どれくらいの

 速度が出ているのかは計測不能。


 ――クラーマーは十億回死んだ


大叫喚地獄潰エンドレス・パイロキネシス


 放つ闘気による、大気の振動により、

 相手の体内の水分を揺らし、蒸発させ

 そして、燃やし尽くす。


 ――クラーマーは百億回死んだ


焦熱地獄投スロー・サロー


 相手を掴みつかみ、体内の電子を

 完全に停止させる。

 静の技――クラーマーの体組織の

 最小単位は、電子。よって有効!


 ――クラーマーは一京回死んだ


大焦熱地獄演舞EPR・パラドックス


 相手を空中に放り投げた状態で

 1秒間に兆を超える蹴り殴る技。


 ――クラーマーは十京回死んだ


 「阿鼻地獄・終掌ベータ・ディケイシィ


 ――中性子を超え、素粒子を超え、

 クォークレベルで物質及び魔法を破壊する。

 完全なる破滅の掌底しょうてい


 そして、クラーマー及び、700億を超える

 空飛ぶ棺桶かんおけの中に控えていた、

 異端審問官ハインリヒ・クラーマーの痛み分けサクリファイス

 ための身代わりの体は全部消滅し、隠し持っていた伏兵を含め、


 異端審問官ハインリヒ・クラ―マーを信奉する

 者たちは、完全に消滅した。

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