最終章9  『頂上決戦 カグラ 対 クラ―マー』

 扉を蹴り破り中に入る。


 眼下に広がるは、血まみれの無数の肉塊と血の海。

 クラーマーが癇癪かんしゃくを起こして惨殺した、

 元幹部たち亡骸なきがらだろう。


 そして、部屋の奥に控えるは異端審問官

 ハインリヒ・クラ―マーと、

 その腹心の複数の幹部たち


 幹部たちは一人あたりの戦力は、

 斥候せっこうとして、地上に派遣した

 異端審問官と同程度の高い実力の持ち主。


「きっひっひっひ。……どうやってここまで来たか……もうそんな事なんてどうでもいい! 問いませぇん! 億を超える尋問の末にぶち殺してやりましょう!!」


 カグラは、デュパンに向かって言い放つ。

 私怨では無く、その方が勝率が高いと

 見込んでの発言である。


「――大将首は俺が殺る。デュパンは、俺がクラーマーを相手にしている間、他の連中を頼む!」


「オーケー。死ぬにゃよ! カグラ」


 今のカグラには、確かに

 クラーマーの体内から這い出るはいでる悪意の根と花が。


 これまでに視たみたことがないほどに、

 邪悪な色をした極彩色の花が咲き誇っている。


 チン、カラン。空薬莢が排出され、

 カグラのソードオフガンが火を噴く――。


 クラーマーはゆらぁりゆらぁりと、

 まるで催眠術をかけるかの如く、

 タリスマンを左右にゆっくりと振るう。


 ――だがおかしい、レールガンの早さで

 放たれた弾丸を確認したあとに、ゆっくりと

 振るうことなどできるはずがない。


 つまり、彼とカグラの周りの時間

 だけが、ねじ曲げられているということ。


 そして、まるで透明になったかのように――消えた。

 殺気も、音も、臭いも、存在自身を消し去る、彼の秘奥義。


 ――だが今のカグラにはえる。


 何故ならなぜなら、どんなに気配を消しても、彼の周りに咲き誇る

 極彩色の悪意の花を消すことまではできないから。


「神楽流――『起』の型、蛙草ぎゃるぐさ


 極彩色の悪意に向かって、一気に間合いを詰める。


「神楽流、蛙草ぎゃるぐさ派生!――白檀びゃくだん――茉莉花まつりか――夕影草」


 目にも止まらぬ三連撃!!!


 水月を白檀びゃくだんによりぶち抜き、

 胴体に風穴を開ける。


 茉莉花まつりかにより、脇腹を横薙ぎよこなぎ

 蹴り肋骨ろっこつを完全に破壊。


 最後に上段の頸部けいぶを狙った夕影草ゆうかげぐさ

 によって、首がまるでサッカーボールのように、

 首の根元から吹っ飛び、クラーマーの自室の壁に直撃。


 ――悪の花は散った。


 まるでビルの屋上から落とされたスイカの

 ように頭部が壁にぶつかり、脳漿のうしょうをぶちまけ、

 壁の染みとなった。


 ――だが、幹部たちはその光景を見ても何の反応が無い。

 引き続き、猫箱暴きの魔女デュパンを追撃するのみ。


(……やはり……何かがおかしい……)


 腹部に穴が空き、肋骨ろっこつも粉砕骨折、首は捻じ切れねじきれ

 頭部は砕けたスイカのように壁で破裂している。

 にも関わらず、首無しの死体は、ゆらぁりゆらぁりと、

 タリスマンを揺らす。


 ――まるで、さっきの怪我けがうそのように復元。

 完全なる復元を果たしている。


「きっはっはっは。どうしましたかぁ……カグラさぁあん?! 私に対して何かされましたかぁ?! 無駄……無駄なんですよぉっ!! カグラすぁあん!!」

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