第三章13 『法廷逃走』
轟音と爆音っ! グレンデルと解釈の魔女プルガトリオが再び、法廷外で争っている! グレンデルのクレイモアによる横薙ぎの強烈な一閃っ!! グレンデルが、ただ一薙ぎするだけで大気が震え、突風が吹き荒れるっ! だが、それを解釈の魔女プルガトリオは強力な氷の膜を展開することで、防ぎきるっ!
つまりこれは彼等の本気の闘い。迎え撃つ解釈の魔女プルガトリオも轟雷や、氷結など様々な魔法を繰り出し、グレンデルの強烈な剣戟を受けきる。遠目からみる限りは、ややグレンデルが劣勢っ!
「くっ……………。すまねぇ。完全に油断したぜっ! あの…………っ解釈の魔女プルガトリオの法廷内での弱ったふりは、全ては演技だった。私様とした事が、完全に騙されて、おまけに致命傷までくらっちまった。ここは私様が食い止めるっ! だからお前たちだけでも、逃げろ…………なに、私様は絶対に死なねぇっ! あとで絶対に追いつくから、後ろを振り向かずに早く逃げろおおおおっ!!! ここから、後方方にあの仮面の男と裁判長が、ゲートとか作ってるから早く逃げろおおおおおおっ!! ゲートを維持するのには大量な魔力が必要で裁判長でもそんなにもたねぇぞおおおおおおおっ!!!!!」
グレンデルが、やや説明口調かつ早口な感じでカグラ達に叫ぶっ!
「ふふふ。愚かなるかな、人の子よ。貴様達、太陽と北風の童話を知っておるかな?! ふふふ。 法廷内でのあの弱ったふりは全てはお前たちの油断を誘うための演技よ! こうやって、貴様達が油断をする瞬間を狙って虎視眈々と待っておったのだ。はーっはっは! いまや、弁護人グレンデルもこの有様さぁっ! 貴様らを守る奴はいないぞぉ?! 死ねぇドクサレカグラぁっ!!! ひゃーっはっはは!」
「うおおおおおっ!!! 卑劣なる魔女っ! プルガトリオぉおおおおおっ!! 絶対にぶっ殺してやるううぅううううううううううっ!!!」
カグラは全速力で、一直線で解釈の魔女プルガトリオに向かって駆けつける。だが…………
「無駄だぁっ! 第一の解釈ぅっ! ドクサレカグラは妾の前に辿り着くことは叶わぬぅ!」
カグラは走れども走れども、プルガトリオの前に近づく事はできない。まるで、騙し絵のペンローズの階段を走らせられているように、走れども走れども一向にカグラと解釈の魔女プルガトリオとの距離が縮まらない…………っ!!
「残酷なる魔女プルガトリオッ…………っ鉛玉の雨で蜂の巣になるがいいデスッ!」
フルオートのマシンガンからおびただしい数の弾丸が射出されるっ! セレネは解釈の魔女プルガトリオの行動を予測分析………空気抵抗、重力抵抗まで計算。弾幕の軌道を計算しその弾幕を解釈の魔女プルガトリオに突っ込ませるっ! 魔女の苦手とする鉛玉、これなら有効っ…………!
「第二の解釈ぅ! 鉛玉の雨はぁっ! 解釈の魔女プルガトリオに敬意を示しぃっ! 妾の横を通り過ぎる物なりぃっ! ひゃっはははははははっ!!! ザマ見ろボケナスセレネっ!!」
まるで魔女の目の前に極小の空間歪曲が起きたかのように弾丸が逸れる。その光景は本当に鉛玉が魔女に敬意を示して、横に逸れているようにしか見えなかった。これが、圧倒的な力を持つ者の魔力っ!
「死ぬにへぇっ! 年増のババア魔女っ!
「……………………っう」
何故か、ソレイユの火球だけが解釈の魔女プルガトリオに直撃するっ! 魔女の弱点は炎。やはり伝承の通り、魔女は火が弱点だったのだっ!
「おい、ソレイユっ!! 何言ってんだ?! おいっ! それは、目上の女性に向かって言ってはいけない言葉だ…………っ私様もフォローはできんぞっ! おい、マジやめろよっ! バカソレイユッ!」
「ナイスッ! ソレイユっ! その火球あの魔女にめっちゃ効いてるぞっ! へっへっへ、アイツ涙流してやがるぜっ! それがあの魔女の弱点だ! やれぇ! 焼き尽くせっ! 魔女狩りだぁっ!!」
「おいっ…………っカグラも煽るなっ!」
「死ぬにへぇっ! 年増の若作りババア魔女っ!
「…………っ…………」
カグラの目には、余程ソレイユの火球の直撃が解釈の魔女プルガトリオに効いているのか、心なし肩を小さく震わせているようにも見えていた。
「おい、ソレイユ。分かった、分かったから、だからここは私様に任せて、頼むから早く、逃げてくれっ! ほら、後ろの方でいま裁判長と仮面の男が元の世界に帰るゲートとか作ってるから! つーかいい加減にしろやっ! 普通に目上の人に失礼だぞっ! もう面倒くせぇなぁっ!! 3人とも後方に吹き飛べっ!」
グレンデルがそう告げると、3人の前に突風が吹き荒れ、カグラ達を遥か後方に吹きとばす。それは嵐というよりは空気の塊をぶつけられたような強烈な衝撃であった…………そして、遥か後方にいる仮面の男が、吹き飛ばされた3人を何らかの方法で捕まえる。
「急いで下さいっ! 今、あなた達を元の世界に戻すためのゲートを開きましたっ! グレンデルさんが、あの解釈の魔女プルガトリオを引き留めている間に逃げて下さいっ! このゲートはあと30秒しか持ちませんっ! これは裁判長命令ですっ!」
「うおおおおおっ!!! グレンデルさんを見捨てて逃げれる物かあっ! 許さねえぞ解釈の魔女プルガトリオおおおおおっ!!!」
一向に言う事を聞きそうにないカグラの後ろに、まるで暗殺者のように音もなく忍び寄る影っ!…………っ召使の仮面の男っ!…………っそして素早い当て身!
「……………………」
仮面の男は気絶したカグラを、セレネに向かって放り投げる。まるで、法廷外では言葉を一切話さないというような強い意志を感じた。
「さあ、気絶したカグラさんを抱えて、このゲートを…………残りあと15秒…………早く、行ってっ!」
遠くの方で、凄まじい爆炎や雷や暴風が上がっていることから、グレンデルと解釈の魔女プルガトリオの闘いが、もはやカグラ達の戦えるレベルではないことを明らかに示していた…………。
「ゴメンナサイッ! グレンデルさん! ワタシたちは一足先に戻りますデスッ!」
「グレンデル、武運を祈るにへっ!」
そういうと、気絶をしたカグラを抱えたセレネと、ソレイユはゲートを通り元の世界へ帰っていった。
「…………。終わったね。まるで嵐が過ぎ去ったかのような出来事だったよ。本当に疲れた。早くお家に帰ってお風呂にはいりたーぃ」
「はいはい」
仮面の男は、裁判長をあやすように頭を撫でる。
「それにしても、グレンデルの方はプルガトリオのフォロー大丈夫かね? 遠目に見ても、結構へこんでるっぽい感じだったけど。それにしても、ソレイユちゃん、あれは女性には言っちゃいけない台詞だったねぇ…………」
「地雷踏んでたね。むしろ地雷原の地雷をわざわざケンケンパで一個づつ踏んでいくような鮮やかさで踏んでたね…………あれは駄目だよ。それに年齢のこと言われたら、僕ら何京年くらい生きてるんだって話だし、ねぇ?」
「…………うーん。10京年くらいっ? ところでケンケンパって何?」
「あのね、ケンケンパと言うのはね…………」
(長くなりそうなので割愛)
******
「おい……。気にするな、プルーちゃん。あいつらは、なーんも分かってないのさ。所詮はクソガキだ。だから気にするな。アイツらのアドバンテージは若さ位の物だ。年を経るごとに年輪の様に増していく、女性の真なる美しさという物をぜーんぜん理解してないんだ。駄目だ、あいつらはまったく見込みがない。だからプルーちゃんは気にするなっ! なっ!」
「ふっ………ふふ。わっ妾は、全く、き、気になどしていないぞっ………。あの火球の魔法が、妾の弱点だっただけだ、だから、大丈夫なのだっ」
「ほら、ハンカチだ。それで鼻かんでも良いから」
「…………うっ…………」
グレンデルが、優しくプルガトリオを抱き抱えつつ、背中をぽんぽんと叩いてやると、その胸の中で泣いたという。
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