第一章2-2 『髪だ! 服だ! 散財だ!』《日常話スキップ可》
ここは、カグラ達馴染みの安宿のカグラの部屋の一室。
寝起きで、寝ぐせの酷いセレネとソレイユは
髪のセットをしてもらうためにカグラの部屋に訪れている。
「ご主人さま、にんにく臭いにへぇ」
「いやロリ助。お前も相当のものだけどな」
ローキックが飛んできた。
猫キックより痛くない。
なお、猫キックなる言葉が
存在するかどうかは知らない。
「ふぁあ……マスター。おはよーございマスッ」
「おはようロボ子。寝ぐせが凄いぞ。髪をとかしてやるからそこに座ってろ」
カグラは、スプレーで霧状の水をかけ、
丁寧にブラッシングする。髪をいじることで、
軽い性的欲求を満たし、好感度を
上げることもできる一石二鳥の作戦である。
……カグラは髪フェチなのだ。
「ほれ、どうだ。鏡を見てみろよ、良い感じだろう」
「ありがトウございマスッ。髪が綺麗になりまシタ」
「にっへへへぇ。それじゃご主人。ボクの髪も結ぶにへ」
「そうだな。昨日はストレートだったから今日はツインテールにしよう。そうだな、今日のツインテールのイメージは機動戦艦ナデシコのルリルリ風でいこう」
「ロリロリ? 今日は初音ミクとかいう子のツインテールじゃないにへ?」
「基本は同じラビットスタイルのツインテールとはいえ、だな。ちょっとだけ結い方が違うんだよ。そこの辺りは俺的には拘っていきたいポイントなの。はいはい。髪をセットするからロリ助も黙って座ってなさい」
女性の髪の毛いじりは俺の趣味だ。
特にロリ助のように、いじれる髪の
ボリュームがあるロングヘアーだと
いじりがいがあって単純に面白い。
プラモデルとか作っている感じに近いのかもしれない。
その日の気分によってポニーテールにしたり、
三つ編みにしたりいろいろと楽しめるのが素晴らしい。
「どうだ、このツインテール。俺の力作だ。ロリ助の甘ロリ服にも似合っているんじゃないか?」
「うん。髪型はグッドにへ。ボクのはただの甘ロリじゃないにへ。よーく見てみるとワンポイントで隠れドクロとかあったりして、少しパンクな感じなのがこの服の特徴にへぇ」
「隠れミッ〇ーみたいな奴ね。はいはい。それじゃー今日は、約束通りユニシロにいって装備を整えるぞー!」
一通り身だしなみを整え3人で買物に繰り出す。
道すがら取り留めのない話に花をさかせる。
「ところでお前ら俺を呼ぶときの呼び方に揺らぎがあるんだが、なにかこだわりでもあるの?」
「マスター、どういうことデス?」
「例えば、マスターとご主人様って呼ぶ時と名前で呼ぶ時があるけど、そこらへんどういう使い分けしてるの?」
「呼び方はその時の気分によるにへ。特に意味はないにへ」
「セレネも気分デスッ。……そういうマスターも同じデス」
「改めて、そう言われると言葉に窮するな………まあ。ぶっちゃけ気分だわな。俺も特にこれと言って明確な基準はない」
「ぶっちゃけこの会話のやりとりもう10回くらい繰り返している気がする。ご主人は痴呆にへ」
「ソレイユ、事実とはいえ……言ってイイことと……言ってハイケないことがありマスッ」
「だーれが、痴呆だ! 俺はまだまだ若いっつーの」
そんな取り留めのないやり取りをしているうちに、
目の前にユニシロの看板がみえてきた。
比較的価格が安めの防具類一式が揃う店だ。
とにかかくバカでかい店で、おまけに、
ドワーフでも、エルフでも、獣人でも、
ロリでも、フィットする服を売っている店で重宝している。
「それじゃ。まずは幼女体系のソレイユの服から探すかな。このハーフリング族コーナーなら丁度いいサイズのがあるんじゃないか?」
「にへぇ。サイズは会うけど、ぜんぜんフリフリが足りないぃ~。なえなえ~」
「今度、稼いだらお前の好きな有栖&牌烈だかの服を買ってやるから。今日はこれで我慢しときなさい」
「今度っていつー?」
「今度は、今度だよ! ほれ、このパステルピンクのフリルのついた服ならロリ助にも似合うぜ? 魔力増強や状態異常耐性もおまけについてるし、ほれ。試着してきな」
「むー。仕方ないにへ。試着してくるにへぇ」
「んじゃ、次はセレネの服を探すか。やっぱアンドロイドといったら、伝統的に制服かメイド服だよな。それじゃメイド服コーナー行くか」
「メイド服、セレネも嫌いじゃありまセン。了解デスッ」
クラシカルなメイド服から、
丈の短いメイド服までなんでもござれでそだっているが、
細かな刺繍や、フリルの数なんかを見るとやはりメイド服の
専門店と比べるとクオリティーが二段階くらい下回るが仕方ない。
驚安の殿堂こと、ドン・キホーテのサテン生地のメイド服よりは10倍マシだ!
あの安っぽいテカテカのサテン生地はメイド文化を愚弄しているといっても良いだろう。
――神が許しても俺が許さんッ!
「ほいじゃ。これとかどう? セレネは機動力を活かした戦闘スタイルだから、この丈の短いメイド服動きやすそうだしいいんじゃない?」
「動きやすそうデス!」
「おまけに、狙撃精度向上アップの効果付き。あと、この黒のハイニーソックスも買おう。こちらは素早さアップのおまけつきだ!」
「選んでくれてアリガトウございマス。ちょっと試着してきマス」
*****
――待つこと30分。
試着を終えた二人がやってきた。
おお………二人ともかわいいではないか。
甘ロリ系ロリ助と、メイド服のロボ子。
やっぱり異世界転生はこういう楽しみがあってこそだよなぁ。
「似合ってるじゃん。いいじゃん。二人ともかわいい」
「にへぇ」
「お褒めいただきありガトウございマス」
「それじゃ、お会計しに行くぞ」
「その前に、ご主人様の服を選んでやるにへ」
「気持ちはありがたいがな。俺はフリフリの服とか、ドクロとかチェーン着いた服とか着ないからな?」
「マスターは、ジャコス風の服は駄目デスか?」
「一応、最低限は気にするぞ俺も。近距離戦闘スタイルにあうやつを見つくろってくれよな」
「男のくせにこまけー奴にへ」
「あとちょこって、異世界っぽい感じの服頼むよ。戦闘時に足つっかえたからマントはいらないよっ!」
「了解しまシタ。ソレイユ、それでは紳士服コーナーに参りましょう」
……待つこと1時間。
退屈しのぎに文庫本を読んでいたら
いつの間にやら没頭していて、
彼女たちが戻ったことに声を掛けられ
るまで気付かなかった。
まずは…………セレネのは、っと。
「ってお前、それジャージじゃん。いや、確かに前衛で戦いやすいから、俺も着たい! 着たいんだけど! それは駄目なんだよ!」
「なんでジャージは駄目デスか?」
「ジャージはな……偉大な異世界転生先駆者の正装であってな、NGなんだよ。怒られる。でも、ナイスチョイスっ! ナイストライっ!」
セレネの頭を撫でてやる。
それでは、ソレイユの服はと言うと……。軍服。
「軍服はね………確かに、確かにカッコいいことは認めるよ? ドイツ系の軍服は特に格好いいし、強そうだよな」
「強そうにへ。メイドと、ロリと、軍オタみたいで楽しそうでもあるにへ」
「うん。だけどな。たが軍服を着るためにはな、クールで冷酷だけど、ふとした瞬間に思いやりを見せるような、そんなハードボイルドなキャラ付けが必要なんだよっ……」
「ハードボイルド……ご主人とは対極にへぇ」
「そもそも、軍服を着るようなソリッドなキャラはこのユニシロで買ったりしないだろっ! この店も店だ、何でもかでも取り扱いすぎだろっ!」
「ごちゃごちゃうるせーにへ」
「そんなに言うならマスター一人で探してくだサイッ」
セレネに細かい奴とか言われて、若干傷つきつつも服屋を回る……。
それにしても本当に種類が多くて何を買えば良いのかよく分からないなぁ。
それに焼き肉の一件もあり、懐事情も寂しい限り。
うーんどうしたものか。
――っと目の前に在庫一斉処分特売品コーナー。
「異世界冒険者になろうセット……ね。インナー、アウター、ボトムの三点セットでおまけにステータスアップ小と状態異常耐性小の効果付きっ! これ、いい感じじゃん。黒は闇っぽい感じで強そうだから絶対に選ぶとして、安いからおまけにこの白っぽいのも選ぼう。なんか高貴っぽい感じで格好良い」
袋詰めされた三点セットの服をドヤ顔で持っていく。
「ご主人。遅いにへぇ」
「セレネ……待たされ過ぎて、危うくスリープモードに移行するとことデシタ」
いやいや。まだ10分も経っていないのですが、と反論したかったが、二対一では分が悪いので大人しく謝罪をした。
「待たせて悪かったな。バーゲン品があったから、これに決めた。異世界冒険者になろうセットのブラック&ホワイト。どうだ、微妙に異世界感が漂う意匠がかっこいいだろ! ほれほれ!」
益体のない会話を繰り広げながら、レジへ向かう。店員に『試着代』とかいう謎の料金を請求されかけたが、嘘だと見抜き、ちゃんと正規の料金で買うことができた。
「結構荷物の量あるからそれじゃ。ソレイユたん。いつものお願いします」
「マジカル☆インベントリ。にへにへ~」
――空中に円形の漆黒の虚空が浮かびあがる。
全然
(多分)無制限に荷物を入れる
ことができて、とても便利な異能である。
これが、彼女が転生時に得た異能。
無制限に道具を保管できるマジカルインベントリ。
「そんじゃ荷物はここに入れて……と。それじゃ、みんなでどっかでクレープでも食べつつ一休みでもしますか。その後には、就労支援センターこと、ギルドに行こう!」
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