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激おこである。司書はぷんぷん怒りながら商店街を歩いていた。返却の期限が過ぎ、催促を入れたら「暇がないので取りに来て欲しい。」と返された。
ひどい話だ。自営業なのだから休みにすればいいのに。どうして私が勤務中に誘惑の多い商店街を歩かなければいけないのか。
司書はそう思いながら美味しそうなお肉を見ては緩んだ頬を叩いて引き締め、新鮮な野菜を見ては上がった口角を下げていた。つまり、顔に説得力がない。怒っているんだろうな~っと思われているだけである。
「ゼブラさん!ちゃんと期限に返しに来てください!」
数々の誘惑を振り切った司書は「お肉なマンデー」の前でゼブラに説教を始めた。
「司書さん、本当にすまねぇ。」
「すまねぇじゃないですよ。この本を待っている人だっているかもしれないじゃないですか。」
数々の試練を越えてきた司書は私情8割で怒っていた。勤務中だから買い食いも出来ない。お腹すいたんだぞぉ。そんな感じで怒っていた。
「それは悪かったな。今回はこれで許してくれないか。」
ゼブラは出来立て熱々のコロッケを司書に渡した。これも本にかいてあったものである。伴侶と客は胃袋で掴めとあった。コロッケを揚げた匂いで商店街にやって来た冒険者も少なくない。
「......今回だけですよ。」
取引は成立した。二人とも笑顔で握手をした。司書はもちろんコロッケを持っていない手で行った。
コロッケを美味しそうに頬張る司書。サクサク食べれる衣からはジューシーな肉汁が飛び出し、肉も固すぎず柔らかすぎずの丁度良い塩梅であった。
「こんな美味しいコロッケを作っているならしょうがないですね。」
「龍殺し殺し」もコロッケには勝てなかった。その美味しそうに食べ歩きしている司書を見た冒険者達の間で「商店街の天使」と呼ばれ、商店街に通う要因の一つとなったのはまた別の話である。
ちなみにその後司書は上司に油がべったりついた唇を見られ勤務中であるも怒られたのであった。
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