金星へ行きました

@arupaka03

金星へ行きました

博士から連絡がきた。

「君にぜひとも協力してほしい。私は金星で待っている。シャトルを手配するから、乗ってやってきてくれ」

僕は嬉しくなった。だって博士が直々に僕に対して頼み事をしてくれたのだ。人から必要とされる。こんなにもうれしいことはない。僕はすぐさま、シャトルに乗車することにした・・・シャトルの中で僕はスマートフォンを家に忘れてきたことを思い出した。まあ必要ないか。どうせ金星では電波も届かない。シャトルは動き出した。僕の胸は期待でいっぱいだ。不安なんて何もない・・・シャトルは何事もなく金星に到着した。シャトルを降りると、すぐに博士が出迎えてくれた。

「遠路はるばるありがとう。早速だけど君には金星の探索をお願いしたい。」

博士に案内された先にあったのはパワードスーツ。おそらくこれを着て金星の探検をするんだろう。でもなんだろう、これ体がむき出しじゃないか。僕は宇宙服みたいものじゃないと金星の探検なんてできないぞと思った。

「君なら大丈夫だ。さあ着てくれ・・・」

博士は何度も僕に対して大丈夫と言ってくれた。なんだ、博士が言うなら大丈夫なんだろう。僕はパワードスーツを着た。でもやっぱり気になってしまう。

「大丈夫だ・・・君なら出来る・・・」

博士は繰り返し大丈夫、大丈夫と言いながら僕の体を揉んでくれた。ごわごわとして、それでいて温かみのある手に僕はとっても安心した。

パワードスーツを着た僕と博士は探検のために作られた金星の出入り口までやってきた。

「君なら大丈夫だ・・・さあ行くんだ」

僕は意を決して飛び出した・・・大丈夫じゃないじゃないか、体が熱い!痛い!痛い!僕の体は金星の大気に耐えられず、溶け出してしまった。それを見た博士はあわてて僕を出入り口の内側に引き寄せた。

「おかしい・・・なんてことだ・・・なんてことだ・・・」

僕の体はどろどろに溶けていた。熱いなぁ・・・このまま死んじゃうんだろうか・・・せめて誰かに連絡したかったなぁ・・・でもスマートフォン忘れてきちゃったなぁ・・・

ここで僕は自身の軽率さに後悔した。あの時必要ないとか思わないでちゃんと持ってくればよかったなぁと。あれ、ちょっと待てよ、そもそも博士は何の博士だよ。僕は自身の軽率さに絶望した。

「おかしいなぁ・・・なんで失敗したんだろうなぁ・・・」

僕はなんだか何もかもが嫌になってしまった。なんでこんなやつのことを信用しちゃったんだろう。なんで大丈夫だって思っちゃったんだろう・・・

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