ヒロインが、来る

 そこには、割れた地球があった。亀裂から膨大なエネルギーが溢れ出し、大爆発を起こす直前の地球。

 それが太陽系の中に浮かんでいた。

 人も、動物も、空気も、何もかもの時間が止まっていた。

 たった一人の少女を……除いて。


 地球「んんおおおおおおぉぉごどぐぐぐぐぐんあぁあぁばょじあああああざずごごごごごあああぁぁぁああああああわぐんんおおおおおぉごどぉ」


 みるみるうちに地球が修復されていく。時が戻っていく。

 少女が、時を、戻している。


・――――――――・


 「ちょっとおぉ!!アンタたちだろ!これやったの!!!!!!」

 呆然とするクツルタに、とある少女が問い詰める。


 「……センパイ、こんな女の子いました?知り合い?」

 「いやぁ、俺も知らん。急に現れたよな。ポッ、と」


 肩を落とすんだか腹を立てるんだかわからないような表情の少女。

 「あの、ねぇ。地球割ったのあんたらの仕業でしょ。今、時を、戻して、なかったコトにしたの!!だけどぉ!記憶はそっくり残るからぁ!あんたら覚えてるはずなんだよ地球割ったのぉおお!!!!!」


 「クツルタ、なんかぁ、ヤバイこと言い始めたぞこいつ。頭大丈夫かなあ……」


 「いいや、センパイ、待ってください。地球を割ったって話、あながち嘘じゃあないかもしれません。俺、自分の出した卍で地球割った感じうっすら覚えてます……」


 「本当かクツルタ!?だとしたら、なんてことをしてくれたんだ……!!!割るのはアスファルトだって言ったろお!?それがよ、地球を、地球を…割っちまうなんて……。大したもんだぜ!!!!!!お前は!!!!!!!!!!!!!!」


 「大したもんだぜ、じゃないわよーっっ!!!!!!人がどんだけ苦労して修復したと思ってんの!!??!?!??あれ人生で三回しか使えない大魔術なんだから!!!!!!!!!」


 自分の左手を握ったり開いたりしながら満足げな表情を浮かべるクツルタ。そこにあったのは確かな強さだった。

 顔を上げ、少女に口を開く。


 「ごめん、謝るよ。確かに地球を割ったのは俺だ、君に苦労をかけたかもしれない。地球を治してくれて……ありがとう。」


 「…ふ、ふん!わたしが直さなきゃ、みんな死んでたんだから!!命の恩人と思いなさいよねっ!!」


 「んぐっふっふん(咳払い)……ところで君たちィ、そろそろ、自己紹介、しない?」


 「そうっすね、センパイ。……俺はクツルタ、毒りんごセンパイの弟子だ。卍の極意について教えてもらっている」


 「わたしは、こんにゃく。父が魔術師で、母が世界観測者の一人。時戻しの魔術が使える、唯一の人間よ。」


 「んで、俺が毒りんご。成り行きで、クツルタの師匠を務めていて、コンビで漫才をやっている」


 「俺漫才やる気ねーからぁ!!いい加減なこと言わないで!!!」


 「漫才できねー奴が女の子とお近づきになれると思うな。図に乗るんじゃねえ」


 「それ汎用性高すぎなの理不尽にも程がある!!!」


セイクリッド・マンジ・ゴッドは、空の上から温かい笑みで3人を見守っていた———。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

卍で世界征服 先仲ルイ @nemusuya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ