卍本編卍

卍で世界征服

 「今日から弟子になりました!クツルタでーす!!!」

 「いや弟子だとはまだ認めてねーし、師匠の毒りんごでーす!!!」


 そこは渋柿高校の文化祭漫才ステージだった。

 漫才部に所属する毒りんごは、ピンを卒業し、クツルタを相方としてコンビを結成したのであった。


 漫才終了後。

 「いや!いやいやいや!!俺漫才やるなんて言ってねーっすからぁ!!!あの決勝でやってた技おしえてくださいっすよー毒りんごパイセン〜」

 「漫才できねー奴が特殊武道都大会で優勝できると思うな。図に乗るんじゃねえ」

 実際、毒りんごの漫才は面白くない。クツルタ相手にどうこう言う資格は微塵も無いのである。

 だが、それを言いたい気持ちを抑え、クツルタは粘る、

 「じぃーーーっ。」

 「凝視してる効果音出すな」

 「じぃーーーっ。」


 「……わかったわかった、教えてやるから、俺ん家来いよ」

 「いいんですかー?ありがとうございます〜!!」


 毒りんご宅。駐車場。

 「センパイの家って、なんか普通っすね。玄関とかあるのかと思ってました」

 「稽古中に玄関吹っ飛ばしちゃって、修理費でかいからそのままにしてる」


 「……いいから、さっさと技を教えるぞ。」

 「はーい」


 毒りんごが決勝で使った技は、「まんじ」。

 クツルタも、決勝で初めて聞いた単語であった。


 「卍って、どういう意味なんすか」

 「さぁ、俺もよく知らない。発動の呪文みたいなもんだろ」

 「でもなんか、今更感ありますよね。語感的に今の流行じゃない感じが」

 「まあ、古代の言葉なんだろうなー。昔から伝わる秘技だからなあ。」

 「いや、そういうことじゃなくて……うーん……。」


 なんやかんやあって、毒りんごは卍の構えをとる。

 中腰になって、右膝を90度横に広げ、右足を45度左に閉じ、左足を前に伸ばして地面につけ、左腕を前に伸ばし、左手を広げ、右手を左肘に乗せる。


 「なんか、コブラがサイコガン撃つときみたいっすね。葉巻くわえてくださいよ」

 「ヒューッ!!」


 「……まあ、これが基本の構えだ。今駐車場の壁を狙ってみるから、見てろよ。」

 「おお、ついにあの技が」


 「うおおおおっ―――――!!!!!!!!!卍卍卍卍卍ィィイッッ!!!!!!!!!!!!」

 「うるせ」

「ドゴォォォオオオン!!!!!!」 

刹那、駐車場の壁は轟音とともに爆発し粉々に砕け散り、どデカイ大穴が空いた。


 「うおーっ、すげー!これがセンパイの秘技!俺が喰らったやつ!」

 「だろう、すごいだろう」


 まあ、ものは試しだ。お前もやってみろ。と毒りんごはクツルタに卍の構えをさせ、左手を地面に向けさせた。


 「最初の頃は、地面で練習するもんだ。コンクリに亀裂くらい入るようになれば上出来だな。」

 「いきなりやってできるもんなんすか?秘技でしょ?」

 「ああ、わりかしみんなできるよ。秘技だけど」

 「秘技かなあ。」


 毒りんごは「卍」をレクチャーする。


 「マジ卍」

 「えっ急にどうしたのセンパイ」

 「マジ卍って、連続で言う。エンジンをかけるように段々早くしていくと、エネルギーが溜まって卍がしやすくなる。やってみ」


 「ま、まじ卍…まじ卍、まじ卍まじ卍まじ卍まじ卍まじ卍まじ卍まじ卍まじ卍卍卍まじ卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍」

 「よし、十分にエネルギーが溜まったと思ったら、地面に向かって放ってみろ!卍パワー!!」


 クツルタは自分の体にどんどん未知のエネルギーが流れ込んでくるのを実感した。この不思議な呪文が、大地の精霊の根源となっているセイクリッド・マンジ・ゴッドのパワーを呼び寄せているのだと直感した。いける。

 最大限のパワーを込めて、卍で、地面を、割る!!





 「卍っ!」






地球「ぉどごぉおおおおおんんぐわああああああぁぁぁあああごごごごごずざあああああじょばぁあぁあんぐぐぐぐぐどごぉぉおおおおおおんん」


 地球が割れてしまった。セイクリッド・マンジ・ゴッドの強大すぎるパワー故の悲惨な結末だった。


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