第7話
居たよ。 居た。 やっぱり変な奴が洞窟の中に居た
というか、この一見洞窟のような見た目の穴だが、外からある程度進むと何かを突き抜けるような感覚とともにのっぺりとした空間に切り替わる仕組みになっていたようだ
なので、今俺の状況は最初にここで目覚めた時とよく似たシチュエーションになっている
念のため目の前の変なオブジェに対して会話を試みてカマをかける
「はじめまして」
これにどう反応するかによっては戦い(?)になるだろう。 突撃銃さんの位置は今銃口を下に向け、構えればいつでも射撃体制に移れるようにしてある
「ほう、珍しい存在が居るな。 何処から来たんだい?」
挨拶には答えてもらえなかったがどうやら会話はできそうだ。 それと、誘拐犯と同一人物(?)という疑いは少しだけ減った
だって、俺の目には同じにしか見えない
俺が経験したこの世界に来てからの一連の流れを手短に説明し、もう一つの可能性、今目の前に居る存在が「魔神***」なのかも聞いて見た。 どうやら当たりのようだ
俺が魔神を殺すために召喚されたというくだりは既に説明してあるので普通に考えれば俺たちは敵同士だ
とはいえ俺には攻撃する理由も意思も無いので、その辺も説明する
そうすると、今度は逆にトラブルを未然に防いだと言うことで魔神側からお礼の言葉をいただいた
更に、言葉だけではなく立場を逸脱しない範囲でなんらかの融通を利かせてもくれるとのことだ
突然の高待遇(?)に戸惑った俺はどうしてそんな話しになるのか疑問に思い問いかけて見た
新たに分かった事は、魔神というのは誘拐犯が勝手に呼称しているだけで実際はキューブの管理者でしかない。 ということ(面倒なので今後も魔神と呼ぶけどね)と
ここは高次元世界相当(相当というのは、俺の認識力では正確には捉えることが出来ない為)の空間で色の付いた巨大なブロックそれぞれが一つの宇宙に相当するらしい、中に詰め込まれている文字記号のような何かは生き物ではなく、ブロックに内包する世界の可能性を視覚化されたものだそうだ
そしてブロックごとに管理者権限を持った神的な存在がいる。 と
そして俺は本来そのブロックの一つ、具体的には一つ下のブロックの管理者によって管理されていた低次元から精神を抽出された存在だろうということだ
担当ブロック内であればその辺は管理者の自由裁量で好きに出来る範囲らしい
そして抽出した精神にブロック間を自由に移動できる偽りの体(管理者と同等の能力)と管理者を低次元に落とすことが出来る道具(突撃銃)を与え都合の良い兵隊に仕立て上げようとした
どうして誘拐犯が魔神を殺そうとしていたのかは不明だが、本人しか知らない理由があるんだろうとはぐらかされた
俺個人が選ばれた理由は、突撃銃をためらわず使用し敵と判断した存在に対して偏執的なほど攻撃し続ける精神性を持った意識という条件を満たしていた為じゃないか? ということだ。 心当たりありすぎるわ
偽りの体ねぇ…そういえば、ここに来て一度も便所行って無いわ。 これ俺の身体じゃなかったのか…召喚とか言われた所為でてっきり自分の体のつもりで居たけど違和感無さ過ぎて気が付かなかった
で、誘拐犯の奴は魔神を排除できる存在な俺に必要な道具を与えて自分の都合の良い様に使うつもりだったらしいが、精神的には束縛しなかった(してしまうと俺の認識力の問題で魔神への攻撃自体が多分出来なくなる為。 まあ、見た目は誘拐犯と魔神の区別つかないからね)所為で自分がやられたと言う落ちみたいだ。 うん、アホだね
ついでのように説明されたが、この突撃銃で撃たれると撃たれた部位が穴が開いたように見えていたが、あれは撃たれた部位が次元を一つ落ちた所為で認識できなくなったと言うことだそうだ。 つまり、どういうこと?
後、肝心の元の世界に俺が帰れるのかという話しだが、どうも無理では無いが不可能っぽい。 というのも、俺にわかるようにたとえ話をしてもらったんだが、こんな感じだ
元々俺が居た世界を川に例えて、そこを流れている液体の中から目的に適合した一滴(俺の精神)をスポイトで誘拐犯が吸い取った。 そしてそれを入れ物に入れて動かし、時間が経過したのが今の俺の状態。 元に戻すにはどの時点の何処の川から吸い取ったのかという厳密な情報が必要だが、取った本人は低い次元に落ちてこちらとの対話は不可能な状態。(一方通行の情報伝達は出来るかもしれないがほぼ無意味。3次元の人間が2次元の、例えば漫画の本に話しかけてもそれはコミュニケーションが取れたとは言わないのと同じ) 俺にしたように誘拐犯を高次元に救い上げることは(魔神には)可能だが魔神的にはそれをするつもりは無いとの事
まあ、自分を殺そうとしてた相手だしねぇ
そもそも精神を吸い取ったその場で直ぐ解放でもしない限り何処に戻せば元通りなのかはわかるはずも無い
だから原理的には無理ではないが現実的には不可能だろうと言うことらしい
…つまり、俺はもう戻れない?
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