第4話

 腹が減ったし他に何も見つけることが出来なかったのでいよいよピンク色のチューブを試してみる事にする


 だってしょうがないだろ? 蛸みたいに自分の手足食うわけにもいかないし、洞窟の外に居る得体の知れない何かを食うイメージが今の俺には沸かないんだから

 アレで見た目が兎とか…そうじゃなくても100歩譲って知ってる動物に近い姿だったら多分突撃銃で撃って食べて見たと思う


 まあ、見た目がどうこう以前に今までの常識が通じない場所のようなので食ったらその所為で死ぬかもしれないけどな

 毒があるかもしれないしね


 さて、早速…ってこれ膜が剥げない

 爪で引っかいても切れ目も入らないしどうなってんだこれ?

 まさか撃ってばらばらにするわけにもいかん

 うーん、持ってる感じ皮膚がかぶれたりとかそんな感じはしないので一寸だけそのまま齧ってみる事にした

 とはいえ、本当に食えるのか食い物なのかも分からないので最初は少しだけ…そうだな、齧るんじゃなくまずは舐めてみよう


 ピンク色のチューブの先端をペロッと舐めてみると、お。 美味い、美味いよこれ

 匂いが美味そうで食うと不味い物もあるので(石鹸とか、子供用の歯磨き粉とかな)一寸ドキドキしたが、甘酸っぱくて美味しい

 ん、それだけじゃなくて一寸舐めただけなのに満腹感を感じる

 それに何故か喉の乾きも癒えてる

 なんだこれ? 蛍光色の携行食とか親父ギャグかよ


 まあ、ひと舐めで食事と給水が済むとか物凄く便利なんだが、これ1本で実際どのくらい持つんだろうな?

 そもそも賞味期限とかどうなってるのかも分からんし、満腹感が実は錯覚で実際はこのまま餓死する可能性だってある。 暫くはこのまま様子見かな


 さて、暫く考える余裕が出来たと無理やり前向きに考えるとして、この貴重な時間に何をするか。 だが、俺はまずこの世界? 場所? を観察する事にした


 というのも、ここにどういうルールがあるのかとか、自称神以外にどんな知的生命体(?)が居るのかもわからない状況でバンバン適当に銃撃てばなんとかなるでしょー。 なんて考えられなかったからだ

 なので、洞窟の入り口ぎりぎりで外からは余り見えないよう位置取りに気をつけて外界の様子を観察する事にした

 時間を計る手段が現状無いので次に空腹を覚えるまで、と大雑把に決めて


 じっくり眺めていると幾つか分かったことがある

 巨大なゼリー…まあ、ブロックと呼ぼう

 色違いの巨大なブロックだが、それぞれの大きさはまちまちで、普通に考えればサイズ違いが有れば隙間が出来そうなもんだが、どうも隙間は見あたら無くてその代わりなのか押しつぶされたようなブロックがあり、押しつぶされて小さくなったように見えるブロックは色が濃い


 …圧縮されて色が濃く見えてるんだろうか?

 そう思った理由の一つとしてブロックの中の状態がある

 潰れかけに見えるブロックの中は満員電車のようなすし詰め状態になっていて見るからに窮屈そうだ

 最終的には中身ごと潰れてなくなってしまうんだろうか?


 後気が付いた事といえば、どうも同じ形の記号に見えるもの同士は身を寄せ合うようにして集まって居るものが多い

 やはり、あれはあんな見た目だが実は生き物で何かの社会性を持っているんだろうか?

 もしも蟻のような集団知性体だったとしたら、ちょっかいをかけるとどんな反撃があるかと想像すると恐ろしくなる


 考えていたら無意識に地面をがりがりと引っかいて土くれを握りこんでいた…ってなんだこれ

 握った感触が土じゃねぇ、というか千切り取った分だけ粘土のように一塊で取れていて細かい欠片が無い

 気味が悪くて手放したら落ちて暫くすると千切り取った塊はじわっと床に吸収された


 今更ながら気が付いた

 今俺が立っているこの場所も巨大なブロックの下の面だ

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