第11話 狡い女 2
いつもどおり陽平の料理は美味しかった。
「ご馳走さま。美味しかった」
「お粗末様でした。たくさん食べてくれてよかった。」
食器を洗おうと腕まくりをする陽平を止めて自らキッチンに向かい食器洗いを始めた。
すると背後から突然抱きしめられた。
「ねえ紗奈さん、不倫やめて俺だけのものになんない?」
意表を突いたその言葉に驚きが隠せず唖然とした。
不倫をしてる事は陽平はしらないとおもっていた。
翔ちゃんは気付いてると思うけど、それでも伝えたことは無い。
なのになんで。
「なんで?」
やっとの事で出てきた言葉はその一言だけだった。
陽平とはセフレのはずだ。
確かにご飯作ってくれたり話はするけど会うのはほとんどホテルか家だし。
デートらしいデートもしたことは無い。
「なんでってなんでだろう。言いたかっただけなんだけどね。俺だけの物にしたいってゆうのを紗奈さんに伝えたかった。別に今の関係が嫌とかそうゆう事じゃなくて、紗奈さんが今のままを望むならそれは仕方ないし。でも、辛そうな紗奈さん見てるの俺も辛いの。助けたい。頼りないと思うけど。」
抱きしめられたまま伝えられたそのストレートな言葉は先程以上に突き刺さる。
蛇口からお湯が流れる音が響いた。
陽平の手によって蛇口は締められ、気付けばソファに座っていた。
「どうかな?少し考えて欲しい。」
そう言われたがなかなか言葉は出てこなかった。
だって考えた事も無かったし。
あの人に会えない寂しさとか辛さとかそれから逃げる為に陽平や翔ちゃんを利用してる。そんな私がそもそもこんな言葉を貰っちゃいけないんだから。
「突然こんな事言われても混乱するよね。風呂入ってきたら?勝手に沸かしちゃった。」
いつの間にやらお風呂まで準備してくれていたらしい。
混乱する頭を少しでも整理したくてお風呂場へ向かった。
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俺は本当に自分勝手で偽善者だ。
利用されてるフリをして紗奈さんの気持ちを揺さぶって、自分の物にしようと虎視眈々と狙っていたんだから。
紗奈さんが不倫してる事もその相手の事も大体検討が付いている。
翔さんとは何度か会う機会もあったし2人がそうゆう関係なのも承知の上だ。
翔さんになら譲っても良いと思っていた。
俺はただ紗奈さんが幸せなら良いんだから。
勿論紗奈さんが今の関係を望むならそれだって仕方がないって思うのも本心。
だけど、最近の紗奈さんはいつも強がってる。
そうじゃなきゃ自分が保てないとでも言うように。
もともと細身の体は今にも折れてしまいそうで。
見てるこっちが辛いんだ。
弱音の一つでも吐いてくれればこっちだってやりようがあるのに。
いつもひとりで大丈夫って顔をしてる。
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