第9話 A lonely holiday

いつものオートロックを抜け、玄関の鍵を開ける。


当然、私を待つ人はいない。



部屋着に着替えるために服を脱げば身体からは彼の香りがして。

彼の優しさに漬け込んで彼を縛り付ける自分に嫌気がさした。




あの人との関係が始まってもう4年。


その4年で私はどう変わったんだろう。


酔った勢いで最初に行為をした時はまさかあの人に奥さんがいるなんて思いもしなかったし、4年間もこんな関係をを続ける事になるなんてこれっぽっちも想像していなかった。



あの日は確か、初めて契約を取った日。


独り立ちのお祝いだって食事に誘われて。

仕事が出来る尊敬してた先輩からの誘いにかなり浮かれていた。


考えなしに呑み過ぎて酔った私は気付いたら知らないホテルで寝ていたんだ。

もちろん全裸で。



行為があった事は明らかだった。





何故こんな関係をズルズル続けてしまうのだろう。

出口の見えないトンネルの中で時折差し伸べられる手を掴めないのはなぜだろう。



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「奥さんに悪いと思った事ないの?」


関係が始まり半年ほど経った頃だっただろうか。

あの人に問うた事があった。


そしたらあの人は笑ったんだ


「結婚と恋愛は違うから。俺が好きなのは紗奈だよ」とそういった。


でもね、きっとそれは私だけじゃない。

あの人には私以外もセフレがいるってゆう変な確信があった。


私はあの人の恋人にはなれないし、奥さんにも勿論なれないんだ。

数いるセフレの中の1人。

立場のない私があの人を責める事は出来ない。

だから私の気持ちは胸の奥底にしまったはずなのに。



たまに現れては私の心を掻き乱す。



それに嫌でも職場に行けば顔を合わせる訳で。


仕事をやめようと思った事だって何度もあった。

でも、結局それすら行動に移す事は出来なくて。


なんでこんなに馬鹿なんだろう。


私は馬鹿だ。本当に。



ベットに寝転びスマホを手にとればメッセージアプリに新着2件の表示。

ひとつは翔ちゃんからもうひとつは陽平からだった。


翔ちゃんからはいつもの帰宅確認。

一言返信して、陽平のメッセージを開く。


《今日予定あいてますか?》


陽平は高校時代の後輩で今でもこうして連絡をくれる。


狡い私は陽平の事まで利用してるんだ。


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