第3話That’s a trip down memory lane.
彼の車に乗り込み久しぶりの助手席。
行き先が告げられる事はなく彼は高速に乗った。
車内は私の好きな音楽が流れている。
彼の好みなのか私に合わせられたものなのかは知る由もなく。
昔はよく行っていたドライブもお互い仕事が忙しくなってどんどん頻度が減っていった。
「翔ちゃん。どこいくの?」
「着いてからのお楽しみに」
意地悪く笑う彼の横顔にドキッとした。
確かに出掛けることは減ったが全く会っていない訳では無かった私達。
かと言って恋人や友達と呼ぶ関係でもないが。
必要以上に連絡を取り合う事はない。
割り切った関係を求めたのは私の方だ。
「ちょっと休憩するか」
そう呟いた彼は私の好きなコーヒーショップのあるSAに車を停めた。
車を降りる彼の後を追う。
彼は私の注文を確認する事なく注文を済ます。
会計が終わるとトイレに行くからと包みを手渡された。
初夏の清々しい程の晴天が私には眩しすぎる。
ベンチに座り彼を待ちながら、いつからこんな関係になったのだろうと思いを馳せたが、答えが出る事はなかった。
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あいつの好きなコーヒーショップであいつの好きなものを注文する。
注文は聞かずとも分かる。
あいつもそう思っているんだろう。
後ろから口を出してくる事は無く、久々のドライブに緊張しているのか、行き先が分からない不安なのか少し硬い表情で俺を見ていた。
いつからか会うのは互いの自宅が多くなり、昔のように出掛ける事は無くなった。
昔の俺が今の俺を見たら俺はぶん殴られるかな。ふと、そんな事をおもう。
あいつの変化に気付きながらそれに気付かないふりをして。
都合のいい男を演じる俺をきっと昔の俺は許してくれないだろう。
紗奈と初めて出会ったのは紗奈が小学生の時だった。
母親同士が友人で近所に越してきたのを機に再会したと聞かされた。
「翔ちゃん宜しくね」
そう挨拶をする紗奈母の横で小さくなっていた紗奈を守ってやりたいと思った。
毎日朝は迎えに行き一緒に登校した。
一年後俺は中学へ入学したので、一緒に登校する事は無くなったが、
仕事をしていた紗奈母の帰宅が遅い日はいつもうちに夕食を食べにきていたのでかわらず会う機会はあった。
しかし、3学年差という微妙な年の差のせいか幼馴染以上に進展する事はなかった。
あの時もう少し俺に勇気があれば、紗奈はこんなに傷付かずに済んだのか?
そんな事を思ったが今更だった。
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