第2話来客

ピーンポーン


来客を知らせるベルが鳴る。

モニターに映るのは勿論先程の電話の相手。

無言でロックを解除し

玄関のカギも開けておく。


素知らぬ顔で準備に戻れば、当然のように玄関を開け彼はやってきた。


「まだ準備中ー?お前年々準備長くなってんぞ」


そりゃもうアラサーに片足突っ込んでるんだから準備くらい長くなるのは当たり前だ。


「生憎もうアラサーに片足突っ込んでますから、色々やんなきゃ外なんか出られないの。」

そんな返事をしつつも彼と2人で出掛けるなんて久々過ぎて内心はドキドキだった。

もっと意識してもらいたくて。




15分程で準備を終えリビングへ向かうと彼は自分で入れたコーヒーを飲み終わりソファで寝ているようだった。


「翔ちゃん」


声を掛けると身動ぎするが、きっと疲れが溜まってるんだろう。

目を覚ます気配はなく。


したかたないからカフェラテをのみつつ10分後に起こすことにした。



「翔ちゃーん。準備できたよ。」

前髪を紡ぎなら再度声をかければ眠たそうに目を開けた。


「あ、ごめん。寝てた。お前の用意が長いから。」


軽口を叩く彼を横目に


「先行っちゃうよー」玄関へ向かった。


そんな私の後ろ姿を優しい目で見つめているのを本当は知ってる。

いつだってそう。翔ちゃんはずっと私を見てくれてる。


「紗奈、俺置いてってどーすんだよ。」


ぶつぶつ文句を言いながらも笑みを浮かべて付いてきた。


不器用で意地悪で、でも本当は優しくて。

子供の頃からずっといつでも近くにいてくれた。

楽しい思い出も辛い別れもきっと誰よりも彼が1番理解してくれている。

そんな事はいくら馬鹿な私でも勿論わかっていて。

そんな彼の気持ちに漬け込んでいる自分が大嫌いだった。



ねえ、私どうしたらいいの………





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