第8話 猫とわたし

「すごい、お魚いっぱいいるかな?」


「あんたじゃ捕まえられないでしょ」


膝の上で丸まっている猫がゆっくり目を開けて驚く。

最近では歩くのもやっとになってきた。

この猫が消えるのも、もう直ぐかもしれない。




「ご主人様、連れてきてくれてありがとう」

少しずつ言葉を話す。


嬉しそうに海を見ている白猫に胸が締め付けられた。


「何で海なの?」


「よく言ってたんだ、海は綺麗だよって。でも見れなかったんだ」

この白猫が助けたいという人間が言ったのだろう。

もう目は閉じられている。




わたしは無言で白猫を撫で続けた。

まだ、消えませんように。

神様お願いしますって思いながら。




猫がポツリと言った。

「今まで、本当にありがとう。ご主人様」








「大馬鹿者。あたしにとっては、あんたの方が100倍大事だわ」



最後に泣きながらお礼を言った白猫は、私の膝の上から消えてしまった。


私は海を見ながら泣き続けた。


大切な家族が見たがっていた海を見ながら。





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