第7話 黒から白に

最近スグルの調子が悪い。

ご飯は食べるがいつも丸まって寝ている。

ちょうどあの外出の後だ。


念のため病院へ行くも、特に異常は見られない。


そして今日、黒猫に決定的な異常があった。


「一つ聞いていい?」


「何、ご主人様?」


「あんた、白猫だったの?」


そう、黒が白に。

真っ白な体になっていた。





「新しいファッションだよ」


「な訳ないでしょ」

ギュムゥ!


黒じゃなくなった白猫の顔を揉んでやる。



「冗談、冗談だから」

小さな手で必死に拘束から逃れようとする。


「本当のこと言いなさい」


「わかりました」


解放され、シュンとする白猫。


「ご主人様」

猫が私を見つめる。


「何よ?」


「ご主人様のおかげで力を集める事が出来た」


「は?」


「僕はもう直ぐ消える。やっと大切な人を助けられるんだ」

真剣な瞳で私に言う。


「言ってる意味がわからないんだけど」


「本当はどこかで力が溜まるまでじっとしてるつもりだった。

 でもご主人様が拾ってくれた。おかげで思ってたより早く

 力を溜めれたんだ。体が白くなったのはその反動」


「・・・・」


「僕は、一度死んでるんだ」


「死んでる?」

目の前にいる猫が何を言っているのかわからない。


「どうしても助けたい人がいたんだ。そしたら神様が

 チャンスをくれたんだ」


「何、そのふざけた話」

自分の声が震えていた。


「僕はご主人様に会えてよかった。本当に楽しかった

 あと、どれくらい時間が残ってるかわからないけど

 最後までいさせて下さい」


白くなってしまった猫が頭を下げた。


私は・・・

「てぃ!」


ゴン!

「いたぁ」



思っ切り猫にチョップした。



「あんたが何だろうと構わない。でも勝手に出てくのは

 許さない。わかった?」

指を白猫に突きつけ言った。


「わかった。ありがとう」

白猫は驚いた様子で、小さく返事をした。




あんたはあの時泣きそうになるのをこらえてたけど

我慢してたのは、あんただけじゃないのよ。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る