第6話 黒猫の願い
「たまには外に出たい」
黒猫の要望を受け、私たちは駅に向かう。
トコトコと私の横を歩く猫。
一応ケージは持ってきてある。
「ご協力お願いします」
駅の前で人が募金を求めていた。
「あれ、なんて書いてあるの」
「うん?ああ、
心臓の手術のお金が必要みたいだ。
「ご主人様、今いくら持ってる?」
「は、3万ちょっとだけど?」
「半分寄付してくれない。あの人たちに」
黒猫が私を見上げる。
「はぁ!そりゃ千円とかならいいけどそんなに
寄付するわけないでしょ」
可哀想だと思うが私も自分の生活がある。
それに今日は黒猫とデートだ。
出来れば美味しい物や、色んな場所に連れて行ってあげたい。
「どうしてもダメ?」
「あんたの知り合いなの?」
珍しく食いさがる猫に私は聞いた。
「うん。ちょっとね」
「・・・わかった。でも今日は遠出はなし。それでいいわね」
溜息を吐きながら言う私に、
「ありがとう、ご主人さま」
黒猫が嬉しそうに私の足に体を擦り付けた。
「じゃあちょっと待ってて」
「うん」
私は呼びかけをしてる彼らに近づき、一万5千円を寄付した。
「え、こんなに?本当にありがとうございます」
優しそうな夫婦が頭を下げる。
ただ、少し疲れているようだった。
「いえ、知り合いの黒猫に言われたので」
「え?黒猫、ですか?」
「それでは」
訝しげに私を見る二人に背を向け黒猫が、待っている
場所まで歩いた。
「あ、ありがおうございます」
後ろで二人の声が響く。
少しだけ申し訳なく思った。
私が寄付したのは、私の大切な家族の願いだっただけだ。
そう、嬉しそうに尻尾を振って待っているあの黒猫
の為に・・・。
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