第4話 不思議な出会いと私の願い
「申し訳ありませんでした」
「全く、困るよ。やる気あるの?辞めてもいいんだよ」
何で私が謝るのか。
今回のミスは課長のせいだ。
「先輩、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。上は誰のミスかわかってるし」
自分のミスを私に押し付けた課長は、リストラ対象だったりする。
「あれ、いつもならあのハゲとか言ってんのに」
「しゃべる猫に比べたら可愛いもんよ」
「なんですかそれ?」
不思議そうにする後輩に私は笑った。
「いらっしゃいませ」
本屋の店員が挨拶をする。
絵本コーナーに向かう。
「へぇ、色々あるんだ」
その中の一つを手に取る。
「七つの約束」
母親が小さな子供に7つの約束を守るように言う。
可愛い絵で描かれている。
一つ、元気でいること
二つ、勉強をすること
三つ、沢山遊ぶこと
四つ、出来るだけ人に優しくすること
五つ、自分を偽る嘘はつかないこと
六つ、夢を大事にすること
七つ、悔いのないように生きること
ページをめくる手が震えていた。
いつの間にか涙が出ていた。
私は今、悔いのないように生きてるだろうか。
視界に白いハンカチが渡された。
「大丈夫ですか?」
「すみません。大丈夫です」
ハンカチを受け取り涙を拭う。
「僕もこの絵本好きなんです」
横を見ると先ほどの書店の店員さんがいた。
丸メガネに短く刈り上げた髪の青年だった。
「昔から本が好きで今は本屋で働いてます」
「そうなんですか」
青年が嬉しそうに話す。
「この絵本、母がよく読んでくれたんです」
「これのおかげで僕は夢を諦めずに済みました」
「夢?」
「はい、本に囲まれた生活です」
照れ臭そうに彼が言った。
「羨ましいです。私は夢を諦めましたから」
「今からでもいいんじゃないですか?」
「え?」
彼が不思議そうに言った。どこかあの黒猫に似ていた。
「物事にはタイミングがあるんです。もしかしたら
今がそのタイミングかもしれません」
そう言って彼が微笑んだ。
「それに本当に大切な願いは叶うんですよ」
「そうだといいんですけど」
私は、彼が眩しくて思わず俯いた。
「きっとあなたの描いた絵本が子供に夢を与える事に
なりますよ」
「え?」
顔を上げると先ほどの彼はいなかった。
手には一冊の本があった。
「これ、さっきの本じゃない・・・」
それは「神様からのおくりもの」とタイトルが
書かれた絵本だった。
訳が分からず、レジに向かい、その絵本を買った。
帰ってあの変な黒猫に聞かせてやろうと思った。
でもあいつは知っているような気がした。
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