第3話 同居猫生活

あれから私と言葉を話す黒猫の同居生活が始まった。


「熱っ!僕猫舌なんだかもうちょっと冷ましてよ」


「すぐ舐めるのがいけないんでしょ」

ホットミルクを少し冷ましてやる。


「やっぱ冬はミルクだよね」

毛づくろいをしながら言う猫。


「スグル、あんた毎日家で何してんの?」

私が会社に行っている間、こいつは家で何してんだろう。


「え、テレビ見たりお昼寝したりゴロゴロしてるけど?」


「私もしたいわ、そんな生活」

呆れる私に、


「だって猫だもん」

当たり前のように言い返した。



クリスマスの奇跡から一ヶ月。


この黒猫の名前はスグル。

自分で名乗った。


因みに何故私が猫の言葉がわかるかは謎のまま。

しかも話せるのはこいつとだけ。


スグルが言うには、自分は他の猫とは波長が違うらしい。

こいつ自身は他の猫と話せるらしいけど・・・。


「で、今日は会社どうだったの」


「最悪よ。なんであんな会社行ってんだろ」

私はビールのプルタブを開け喉に流し込む。


「ハァ〜、やっぱビールは風呂上がりよね」


「僕、未成年だし」

横目で睨む黒猫。


「はいはい」


「ご主人様は夢とかないの?」

だらけた私を尻目に黒猫が言う。


「夢ねぇ、だって生活するには働かないとね」


「あれは?」

黒猫が手を挙げた先には一枚のイラストが、壁に貼ってあった。


「これ?実は昔、絵本作家目指していたのよ」

今では部屋の模様と一体化してしまった絵を見ながら言う。


「絵本作家?」


「小さい時から絵本が大好きで、将来は絵本を作るんだって

 思ってたのよ」


「今は?」

黒猫が首をかしげる。


「今は描いてないわよ。才能ないしね」

自嘲気味に笑う。


「誰が決めたの。才能ないって?」

黒い大きな目が私を見ていた。


「猫にはわからないわよ」

責められてる気がして、私は目をそらした。




本当は今の自分が嫌いだ。

生活の為に仕事して、たまに友達と遊ぶ生活

でも満たされない。


私が本当にしたいことは何だろう?

黒猫の言葉は私の心をかき乱した。

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