第17話 噂の真相

「ああ。これでようやく」

四方の壁に敷き詰められたある女性の写真。その部屋の中央、男は作業台に向かっていた。

男の手元には、A1サイズの一枚の紙。手には青白く光る一本のペン。紙には白く弱い光を放つ線がほぼ隙間なくひかれている。男はようやく見つけたのだ。かつて失った愛しい娘のもとに至る道を。だが、それは容易なことではなかった。完遂できる見込みなどなかったのだ。

「だが、これは簡単なことじゃない。あそこは深く深く閉ざされてしまっている……。まず、その日の昼は雨でなければならない。次にそれは6日でなければならない。海側から、向かわなければならない。その間人に出会ってはならない……」

男は条件をぶつぶつと呟きながら、すでに隙間のない紙に薄赤に光るインクで記入していく。そうして、最後に男はこう書き加えた。

『アベリアの花束を忘れないこと』


丘から街へ下りれば、只人として扱われる。数100回目の試みでそう気づいた。それからは、彼女の話を探して回った。そして、時折海から向かうのだ。そうして、何度もなんども取り返そうと試みた。それでも、ある時は彼女はそこにおらず。またある時は、そこへの道がなく。そのまた別の時にはあるはずの場所がそこになかったのだ。忌々しい奴らの行動ルートは一定だった。ごく稀に違う道を辿るものもいるが、その道を避ければいい。誰も、誰一人として通ることのないルート。それが、今年成立する。あとは、どこでアベリアを手に入れるのか、だ。

「今年に限って天気予報が外れるなんてことにならなければいいが」

部屋のなか一人つぶやいた。

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