第13話 へや
私は季節に似合わぬその寒さに目を開いた。
私は寒さでうまく動かない体を持ち上げると、あたりを見回した。
真っ暗な部屋。辛うじて換気口が照明の近くにあるように見える。いや、光が強すぎて見えるだけなのだが。
その照明は台の上に置かれた白い箱を照らしていた。
「私を探して」
そんな声が聞こえた気がした。私はその箱に手を伸ばす。
「そこには無いの」
手は箱をすり抜ける。
「私を見つけて」
箱が揺らぐ。
ノイズが入ったかと思うと、箱は消えた。そして部屋全体が薄明るくなる。
「私はここ」
微かに聞こえる声を頼りに部屋を探索する。
しかし、コンクリート打ちっぱなし、机も何もないその部屋を調べたところで何も出てこない。めぼしいものは特に何も見つからない。
「ここよ、ここにいるの」
声は止まない。
私は壁を叩きながら部屋を一周した。
「もうすぐ」
小さな声が聞こえた。
私は床を叩いて行った。何も言わない。
最後に残ったのは、部屋の中央のコンクリートの四角い出っ張り。
コンコン
「ふふ。ありがとう」
私の視界は真っ暗になった。
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