第5話

ロケットは土星付近にまで到達した。やっぱりそうだ。君の大切なものは、土星の輪の中に紛れていた。

僕が懸念していること。

僕が不安なこと。

君は大切なものを、宇宙のあちこちに置いてきているという事実。


君は、まだこの世界にいるの?

ちゃんとまだ、この世界にいるの?

大切なものを置いて。

僕のことも置いて。

違う世界に行っちゃったのかな、なんて。


そんなこと、君に限ってある筈がないのに、つい考えてしまう。そう、僕の友達が、皆そうだったから。君に会いに行って、皆そのまま帰ってこなかった。通信が切れて、そのまま違う世界に行ってしまったって。


皆、僕を、置いて。



視界が、ぼんやりする。ぼんやりと霞んで、それから。

これは、涙……?

こんなところじゃ涙は流れないからずっと僕の目の中に留まっていたんだ。


それを認識した途端に、次から次へと溢れて来る。

僕は、淋しかった、悲しかった。

こんな宇宙の真ん中で、一人ぼっち。



ロケットへ帰って、ふと外を見る。

探査機かなんかのほんの小さな燃えカスが、ふよふよと浮いていた。

ずっと前に、任務を全うして土星に突っ込んだっていう子かな。


涙を拭いて、じっと、見る。

君も、ひとりで、がんばったんだね。

その欠片は、僕にほんの少しの勇気を与えてくれた。


君に、会いに行く。

僕は、君に会いに行くよ。




君に会える日まで、2XX日。

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