009-♤02

夢見が良くなく、寝れてない。


思い出すのは、あの夜のこと。

あの母親の悲しそうな鳴き声が今も耳にこびりついている。


部長にも心配されたが、こんなことで寝不足なんて恥ずかしくて言えない。

もしかしたら笑いものにされるかもしれないから、言っていない。


でもあの母親にとっては、俺はかたきだ。

何されるか分かったもんじゃない。殺されはしないが、確実に怪我はするだろう。


しかしあのマンションに行かなくてはならない。婚約者が住んでいる。

婚約者は実家暮らしで、結婚と同時に俺と一緒に住むことになってる。

俺は結婚前に同棲したかったのだけど、娘離れ出来ないお義父さんがごねて、そうなった。


定期的に食事に行き、親睦を深めている。なので行かないとお義父さんに何言われるか分からない。機嫌を悪くすると、治るのに時間がかかると婚約者からは聞いている。


今朝来たメールに添付された写真を改めて見る。

間違いなくあの母親だ。


『その子可愛いじゃないか、お前そういう趣味だったのか?それとも、彼女の影響か?』


突然、後ろから声をかけられハッとする。


「え、ええ、まーそんなところです」


『惚気ちゃって、この幸せ者め』


茶化しながらも祝福している部長に戸惑いながらも、受け答えする。

寝不足ながらも仕事をして、婚約者の家に行かなければと思うとため息が出た。

いつもなら嬉しくウキウキしながら仕事をするのに、今日は気が重い。

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