パイロットスーツはエロくない?
訓練場の更衣室でとある服に既に着替え終わった俺は近くのベンチで同じく着替え終わっているレイの愚痴を聞いていた。(何故か手違いで他の更衣室が空いてなかったらしい。しかも時間の関係上カーテンで仕切って無理やり男女兼用となっている)
「はあ……」
俺もまったく同感だよ。
「なんでこんな……」
それはしょうがないんじゃないか?俺だってわざわざここを志望した訳じゃ無いし。
「はあ……」
それはもう割り切ろうぜ?少なくとも良いとこには来れたんだし。
「な、なあ?二人はそれで会話してるのか?」
ん?
声のする方を向くとそこには燃えるような赤髪の青年が立っていた。年齢的には俺と同じか少し上くらいか。
「俺はヴェイク=シーラー。俺もここの新入りさ。ところでそれで会話出来てんの?」
「よろしくなヴェイク。まー、会話は出来てるな。これもずっと一緒に居て何となく言いたいことが分かるようになっただけだけどな」
「す、すげぇ……俺なんかまだ姉さんが何言いたいのか分からねえのに」
「姉さん?」
「多分あの人」
すると、レイが人混みの中の一人を指さす。
行儀悪いぞ〜レイに後で注意しなきゃな……
「お、当たりだ。──おーい!姉さん、ちょっと来て!」
ヴェイクがレイの指さす方にいる人に手を振ると、人混みからヴェイクと同じ燃えるような赤髪を持った女性が出てきた。
「どーしたのヴェイク?……ああなるほど。初めまして、私はジェシカ=シーラー。ヴェイクの姉よ。よろしくね」
ヴェイクの姉はジェシカと言うらしい。そしてここに居るということは彼のパートナーなのだろう。
「俺はシンマ・アケユキ。同じく新入りだ」
「私はレイヴェル=ハーミットよ。シンマのパートナーよ。よろしくね」
俺らも二人に倣って自己紹介をする。
「よろしくな、シンマにレイヴェルさん。さて、さっきの続きだけど二人はそれで会話してたんだよな?」
「ああ。ほとんどがレイの愚痴だったけどな」
「愚痴じゃない。文句よ。だって周りを見てみてよ」
そう言われて改めて周囲を見渡す。
さっきよりも人数が増えてるな。
「それは割り切るしかないってさっき言ったろ?見られるのはしょうがないって」
「でもやっぱり……」
「ん?どういうことだ……グヘッ!」
「なるほどね。私もさっきからそれは悩んでたの。すぐに試験が始まるみたいだから上に何か羽織る訳にもいかないしね」
ヴェイクを腹パンで黙らせたジェシカさんはやはり分かっている。
女性としてもずいぶんまともな人のように感じる。
そう。着替えてからレイが文句を言い続け、ジェシカさんも巻き込まれていて人数が増えるようなこと。
彼女達が着ている服装にあるのだが、その服がまさかのパイロットスーツなのだ。
実際これから試験を行うのだからこれに着替えなきゃいけないのだけどすぐに試験だから何も羽織れないことにレイはぶつくさ言っているのだ。
白を基調とした赤いラインの入ったぴっちりとしたウェットスーツに似た服が今レイ達が着ている服装である。
このスーツはあくまで訓練兵用の物でかつて学校で使っていた俺達の自前になる。そのため、この試験後にちゃんとしたのが貰えるとは聞いているのだが……
「なんでこんな所で待たなきゃいけないのよ……!」
レイが言いたいこともわかる。
今彼女が着ているのは前述の通りぴっちりと身体にくっつく服である。そのため、彼女の身体のラインが見事に浮き出ているのだ。胸の大きさから腰のくびれに足の細さまで物の見事にだ。
そしてここに居るのは軍属の荒くれ共。さっき絡んできたのは別として、しかし彼らは決して下心があってきているわけでは無いのだ。
純粋に自分たちの後から入ってくる後輩達の実力を見たくてここに集まっているのだけど女性陣からは勝手に変態と判断されている悲しき者達でもある。
しかし、はっきり言って彼女達が着ているスーツはなんというかアレなのだ。正直に言ってエロいのだ。目の毒なのだ。さっきのクノエさんも相当だったけどレイも中々あるのだ。
こうして身体のラインを他の連中に見せつけるのにはかなり抵抗があるのだが……今は仕方がない。次からは見せないからな!
「なあシンマ。そういや、二人はどんな関係なんだ?」
こっちを見て試験が始まるのを今か今かと待ちわびている荒くれ共に内心呆れていると隣にいたヴェイクが話しかけてきた。
「関係?それはどういう?」
「俺と姉さんはまあ苗字も同じで姉弟なんだけどよ、二人はそうは見えなくてさ」
そういう事か。別に何か深い理由がある訳でもなく……
「特に何かあるわけじゃないわ。私たちは幼なじみよ。まあ……幼なじみでも一緒にいる時間はとっても長いけどね」
まあそんなわけだ。ところでレイ?最後の補足は必要だったか?
「へーっ!幼なじみなのか!」
彼は心底驚いたように振る舞い、傍らのジェシカさんも素振りは見せなくとも驚いているようだ。
だって……
「普通マリオネットに乗るにはかなり深い関係で無いとダメだからな」
俺は彼らに向けてそう言った。
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