返事は、浮かぶ折り鶴で

沖黍州

Before

 一美かずみは楽しみにしていた。エンケラドゥスを発って地球に向かうときに、恋仲の数志かずしから預けられた手紙ラブレターを読むことを。雰囲気から、きっとプロポーズだと思っていた。帰り道の自分を励ましてくれる言葉を超えて、結婚しよう、と書いてあるのではないか、と何度も考えた。寂しい宇宙の旅路の中で、三通預かった手紙を一つずつ開いた。月に最接近したとき、木星のスイングバイのとき、一美は読んで涙した。最後の手紙を開くときが迫っていた――しかし、それどころではない事態がエンケラドゥスでは起こっていた。

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