交差点
@blanetnoir
それは通り魔に似ている。
一瞬の交錯。
あと一秒、歩くのが遅かったら。
あと一本、乗る電車が遅かったら。
あと一時間、残業をしていたら。
あの瞬間に、出会うことはなかった、はず。
誰かと出会うことを事件のように言いたくはないけれど。
なぜ、私だったのか。
なぜ、私だったのか。
なぜ、、私だったのか。
ぐるぐると、後から後から、ぶつけることができなかった疑問が胸の中に渦をまく。
夜の街の交差点。
死角から現れた大きな体、
その強い手に掴まれて、
身体を抱き寄せられて、
相手の思惑に連れて行かれる。
子どもの誘拐のような、一瞬の出来事。
心の介在しない“誰かを求める欲求”が、誰かの心を求める私を削っていく。
私でなく、適当な身体が、自分がたまたまいた瞬間にあの道を通過したから、が理由なら。
もう二度と、これから出会う誰に呼び掛けられても、心を求める気持ちにもなれそうにない。
強く抱きしめてくる腕の中、顔にキスの雨が降る。
猛毒の雨が、ひとりの自尊心をぐしゃぐしゃにした。
交差点 @blanetnoir
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます