交差点

@blanetnoir

それは通り魔に似ている。



一瞬の交錯。



あと一秒、歩くのが遅かったら。

あと一本、乗る電車が遅かったら。

あと一時間、残業をしていたら。



あの瞬間に、出会うことはなかった、はず。



誰かと出会うことを事件のように言いたくはないけれど。



なぜ、私だったのか。

なぜ、私だったのか。

なぜ、、私だったのか。



ぐるぐると、後から後から、ぶつけることができなかった疑問が胸の中に渦をまく。



夜の街の交差点。


死角から現れた大きな体、

その強い手に掴まれて、

身体を抱き寄せられて、

相手の思惑に連れて行かれる。



子どもの誘拐のような、一瞬の出来事。



心の介在しない“誰かを求める欲求”が、誰かの心を求める私を削っていく。



私でなく、適当な身体が、自分がたまたまいた瞬間にあの道を通過したから、が理由なら。



もう二度と、これから出会う誰に呼び掛けられても、心を求める気持ちにもなれそうにない。



強く抱きしめてくる腕の中、顔にキスの雨が降る。

猛毒の雨が、ひとりの自尊心をぐしゃぐしゃにした。

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