第4話

汐音の言った通り、雨は降らなかった。

寧ろ雲一つなく、星を見るには絶好のコンディションだ。


昔から理由は分からないが、彼女の『予言』は確実に当たるのだ。

それはまるで、未来を見ているかのように――


「予言なんて大げさだよ。ただの勘」


深夜1時、待ち合わせの丘に来た俺に、彼女は笑ってそう言った。


「綺麗だね」


「あぁ、そうだな。星をちゃんと見るの、久々かもしれない」


汐音の隣に腰掛けて空を眺める。

天井いっぱいに散りばめられた星空は、今にも降ってきそうな迫力だ。


「なかなか星をじっくり見る機会なんてないもんね」


俺の言葉に頷いた汐音は「それで?」と問いかけてきた。


「例の地図は持ってきたの?お昼に見たあれ」


「もちろん。ちゃんと忘れずに持ってきたよ」


言われた俺はポケットから地図を取り出して見せる。


「やったー!これがなきゃ、今日の天体観測は始まらないもんね」


小さな子供のようにはしゃいだ汐音は、俺の手から地図を奪い取ると、俺の前に地図を広げた。


「じゃあ、どっちがたくさん作った星座を見つけられるか競争ね」


「へっ競争!?何でまた……」


驚く俺に汐音はあっけらかんと答える。


「だって、そのほうが面白いでしょ?ただ見つけるだけじゃつまらないもん」


そう言ってウインクする。

――忘れていた。汐音は妙なことに面白さを求める癖があったんだった...。


今さら幼馴染みの悪癖を思い出した俺だったが、提案に乗ることにした。

何となく、こんなやり取りが懐かしくて少しだけ嬉しい。


「いいぜ。じゃあ負けたほうは、勝ったほうの飲み物を奢る。それでどうだ?」


「いいよ、望むところ!それじゃあ、いざ勝負!」


汐音のかけ声の元、飲み物をかけた星座探し勝負が始まった。

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