第41話 その先に待つ者… 上

 クラウトとアルベルトは、レインらに連れて来られた狩猟者と共に、レイン達の護送をする馬車とポドリアン達、そして、衛兵と依頼官を呼びに街へと向かって行った。

 レイン達が野営した場所に、レイン一味をインシュアとタイロンが集めている。


 レインは逃がしてくれと言っていたが、インシュアが威嚇すると、システィナに話しかけていた。だが、システィナは、目も合わせずに無視をして食事の準備をしていた。


 『ギガ』を街に持っていく事は無理そうなので、依頼官も連れてくると言っていた。

 これで、依頼完了になるようだった。


 たまにゴブリンが何体かこちらのようすを伺っていたが、インシュアの剣とタイロンの剣を突き刺しているのを見て、そそくさと逃げだしていった。


 遅い昼食をとるとインシュアが話し始めた。

 「俺も…山の向こうに何度か行ったが…、あそこはこことは違うぞ」と言い空を見上げた

 「アルみたいに海を渡った事は無いが、アルがあれだけ強くなったのは、それだけ凄いのがいるって事だ…」と言い、顔を戻してパンを口に運んだ。

 「凄いのか…」とタイロンが言うと

 「…最近じゃ…この辺にも、その生き残りの戦いで敗れたモノが、やってきているって話もある…だからな…」といい、今度は水を飲んでパンを喉に流し込んだ。

 「…まっ、おれは面倒なのが好きじゃないからな…」と言うと、大きく笑い声をあげた…そして

 「…アサト…、シスちゃん…、んで、ジャンボ…おまえら…死ぬなよ。無理だと思ったら、すぐに帰って来てもいいからな…」と言葉にして遠くを見た。

 その眼は、なぜか哀愁がこもっているように見えた。


 この先で待つモノ…それは、まだ見た事のない魔物…そして…人間かもしれない。


 レインを見て思う。

 人を人と見ていない人が存在するのかもしれない。

 それに…魔女やドラゴン…そして、幻獣に竜騎士、夜の王…。

 まだまだ先なのは分かっているが…。

 その先に待つモノは、まだ見ぬモノであるのは確かな事なんだ。


 「…そういえば、」とインシュアが思い出したように言葉にした。

 「第2次討伐戦は、明日のようだな」といい、再び水を飲んだ

 「討伐戦…て、幻獣?」とアサトが言うと、インシュアは頷き。

 「あぁ…今度は14000だってよ。また、やられなきゃいいけどな…」と言葉にすると、林から馬車が出てくるのを見て、指をさして言葉にした。

 「来たぞ。」と…。


 ポドリアンとグリフ、そしてチャ子とレニィが『ギガ』の亡骸を見て口を開けていた。

 「はい…確認しました」と、背の小さく、髪を7/3で分け、油をつけてぺったんこにしている依頼官が言葉にすると、依頼書に完了のハンコを押した。

 それを、クラウトが受け取る。


 それを4人が見てから、また…。

 「まじかぁ…」とグリフが声にだすと、息を飲んでポドリアンが、

 「たまげたぁ…」と言葉に出す。そして…

 「あ…あ…あ…あ…」と言葉にならない言葉をあげるレニィ。その横で、

 「すっ…ごぉ…」とチャ子が言葉にしながら、その亡骸を再び見上げた。


 「…残念だったな…お前らが来ていれば、囮なんてしなくてもよかったのにな。もしかしたら、分け前も貰えたかも…」とアルベルトが言うと、いきなりレニーがポドリアンの首根っこを掴んで揺さぶりはじめた

 「こぉ~ら、デブ髭…あんた、なんで断った!!こんなの狩れるところ見れたし、金貨も貰えたかもしれないじゃない」と…

 「いやぁ~~レニィちゃん…おじさんたちさぁ~、このチンピラに、囮になって、全力で走って、噛まれて、笑って来いって言われてさ…」と言うと

 「出来るじゃない、あんた達なら出来るじゃない!!!少しくらい噛まれても、笑って走れるじゃない!!なんで…なんで…わたしの為に…体張ってくれないのぉよぉ…」とべそをかき始めた。

 それをグリフがなだめると腹に肘鉄をくらった、一瞬だったがように見えた。


 なんか…別のレニィを見たような気がした。


 そうこうしている内に、荷馬車にレイン一行を乗せてデルヘルムへの帰途に就いた。

 レニィは、終始おじさんたち二人を罵り、おじさんたちはレニィのご機嫌をとっていた。

 最終的には、服と新品のロッドを買ってあげる約束をすると、レニィも機嫌を直したみたいだ、そして、今度は死ぬかもしれない依頼もこなすことと言う約束までさせられていた。


 なんか…ほんと、おじさんって言う生きモノは…って、思う光景だった。


 翌日。

 依頼完了の報酬を、クラウトとアサトが受け取りに依頼所へと足を運んだ。

 アサトは知らなかったが、『ギガ』討伐の報酬は金貨200枚、そして、レイン一味の捕獲は、レインが生きていれば20枚、死んでいれば5枚。

 その他は一人10枚であり、今回の報酬は金貨250枚になった。


 午後からアルベルトとインシュア、そして、チャ子をいれて報酬を分ける事にした。

 まずは金貨100枚をパーティーの為に使いたいとの事で、クラウトが提案すると、全員が了承をした。

 残り150枚。内30枚をギルド・パイオニア。20枚を牧場主さんへと渡したいとアサトとクラウトが提案すると、これも全員が了解した。


 残り100枚。

 アルベルトとインシュアに15枚、チャ子に10枚で40枚。

 残り60枚となった、そこで4人で分けると、一人15枚となる。

 するとアルベルトは立ち上がって、自分の金貨15枚を全部、机の真ん中に置くと「…餞別だ…」と言い残し、その場を後にした。


 インシュアも手前に置かれていた金貨を真ん中に置くと、「…こんなにあると、生きる事をやめたくなるからお前らにやる」と言って、ソファーに横になった。


 「んじゃ…これ、」と言って、チャ子は干し肉を齧り出すと

 「チャ子のは、かあさんにやって」と言い。

 干し肉を齧りながら中庭に向かって駆け出した。


 「それじゃぁ~」と言いながらクラウトは2枚手に取ると、「僕はこれでいいよ」と言う、それを見て、他の3人も金貨を2枚とった。


 「ここで相談がある」とクラウトが言葉にすると、一同はクラウトを見た。

 「この後は、遠征と言う名目で旅をしようと思う」とクラウト

 「…遠征ですか?」とアサトが言うと、その言葉にクラウトは頷く

 「予定は約3か月。ゲルヘルムを経由して、西の街、グルヘルムまで行き、そこから、再び、ゲルヘルムを経由して、ここへ帰ってくると言うプランだ…」と言うと、3人はクラウトを見る、と言うか、何を言っているのか分からない…感じであった。


 「ゲルヘルムはいいが…グルヘルムまで行って帰ってくる…で終わりじゃ無いだろうな…」とタイロンが言うと、クラウトは頷き。

 「これから、この金貨を渡しながら、アイゼンさんにも相談しようと思っているんだが、この事は僕ら次第なんだが…」と言いながら、メガネのブリッジを上げると「…帰ってきたら…荒れ地の魔女の討伐をしたいと思っている。」と言葉にすると、アサトが立ち上り、「…荒れ地の…魔女…クレアシアンですか?」と言いクラウトを見た。

 クラウトは頷く、そして、「それをクリアできない限り…我々には、ここを離れる事は出来ないと思う。…どうかな?アサト…」と言いアサトを見た。


 そう、そうなんだ…クレアシアン…、師匠、ナガミチの命を奪った女…、だが、あの絶対的な力に勝てる保証はない…でも、使命感なのか…、師匠のかたき討ち…なのか…でも、それとは違う…何かがある。


 それは…、

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