第40話 『ギガ』討伐 下
「…あぁ~、上を向いたな」とインシュアが言葉にすると、「…っち…」とアルベルトが舌打ちをした。
「…なぁ~あと…ここにはこね~から…助けてくれよ…」と
「…あぁ?、まだシャバで生きるつもりか?」と言いながら、立ち上がろうとしているグールを見るとレインの太ももを斬りつけた。
そこから血があふれ出してくる
「…なぁ…知っているか?なんで…あのシロオニが俺たちをおそわねぇ~か…」と、レインに言うと
「…な…なんでだ?」と言い、アルベルトをみてから立ち上がったノーマルグールを見る。
「あぁ~?なに…、こいつの生態…分かってないのか…」と言いながらノーマルグールを見る。
「いいかよく聞けクソムシ…、こいつはな…血の匂いに反応するんだよ…、生きているモノを食らうって言ってるがな、無傷の人間と血を出している人間と…天秤にかければ…食いやすいのは傷ついている方だ…だから…俺は…お前を食ってから襲う。ようは、優先順位は血だらけのお前…そして、俺…だ。あっ、」と言いながら、女神官に近づいているノーマルグールに近づいて、蹴りを入れてレインの傍に倒した。
「あの女を忘れてた…」と言いながら、ノーマルグールの後ろに立つと
「さぁ…見ててやるから無様に食われろ」と冷ややかな目でレインを見下ろした。
「あ…わ…わ…わ・わ・……」と、声にならない声を発しながら股間がじわじわと湿り始める
「…ッチ」と舌打ちをして、その股間を見ながら、
「…しまらねぇ~やつだな…」とボソっと言葉にすると
「アル…」とインシュアが言葉にした。その方向を見る
「…こいつら…もう逝ってしまったみたいだ…ションベンも、もうでねぇ~みたいだ」と言い、親指で示していた。
その後ろには、膝を折って天を仰ぎながら口を開け、涎を垂れ流したままのアサシンと、小さく体を痙攣させている女魔法使いが目に入った。
その光景を見てから、『ギガ』へと目を向ける
「…あぁ…、もういいだろう。アッチも終わりそうだ。」と、言葉にした。
仰向けになった『ギガ』の上にアサトは立ち、一気に首に向かって進み始めると体が大きく動き、ギガの右腕が動き始めた。
それを感じたタイロンが、
グゥッギャーと大きな悲鳴が上がる。
大きく肩で息をする『ギガ』は、グック、グックと喉を鳴らし始めた。
その音にアルベルトが反応する。
「ッチ。」と舌打ちをして
「…おぃ。次が来るぞ、こいつらを片付けて行くぞ!」と言い、レインの前にいたノーマルグールを仕留めると、『ギガ』の元へと駆け出した。
インシュアも、ノーマルグールの首を刎ねるとアルベルトに続いた。
アサトは刃の血を布で拭きとり、揺れる体の上を首めがけて進む。
そして、その場に着くと首めがけて太刀を突き刺した。
グッギャーャーぁぁぁぁ~~~と今までにないくらいの悲鳴を上げる。
柄を持つ手に力をいれて、その刃を鍔まで押し入れると、
……斬るじゃない…ここからは…切り倒す。だ!…と、思いながら、右側へと、刃を押し入れたままに進み、『ギガ』の首から、鍔に手を当て、抜けないように押し付けて下へと向かう。
肉の中にある、大きな筋の塊であろうか…それとも…筋肉であろうか…重い手ごたえのまま、ゆっくりゆっくりと下に降りて行く、アサトの上では血が噴き出し、その血に体が濡れ始めた。
片方の手を、血で滑らないように脇にある布で巻いて、柄を強く握りしめる。
そして……地面に着くと、大きな血の塊が噴き出して雨のように周辺に降り注いだ。
尻もちをついて、その場にへたり込みながらその血の雨が止むのを待っていると、 タイロンが、真っ赤になってアサトに近づき親指を立てた。
それに向かって親指を立てる。
『ギガ』の体が大きく動き、ジタバタをはじめると二人はその場から離れて武器を構えたが、そのジタバタは小さくなり、足元が小さく痙攣すると肩で息をしはじめてから、まもなく大きく息を吐き出して動きが止まった。
それを確認すると、その場にアサトとタイロンがへたり込んでなぜか笑い始めた。
何が面白いのか分からないが…、とにかく…笑いたい気分であった。
ポドリアンが言っていたことが、今ならわかるような気がする、笑える時に笑っておけ…。
だから、いつもポドリアンやグリフは笑っているんだ、大変な戦いを乗り越えて生きている事に…笑っているんだ……。
「おぉ…なにがおかしい」と嫌な者でもみるかのような視線で、アルベルトが見ていた。
追っ手のノーマルグールは3体で、簡単に片づけたのだろう。
インシュアは、『ギガ』の体を叩いて反応を見ている。
クラウトとシスティナが近付いてくると
「…お疲れ様」と言葉をかけて来た。
「おつかれさまです…アサト君、ジャンボさん…」とシスティナが言葉にすると、ギガを見て目頭を緩ませていた。
その後ろには、横になって痙攣している女魔法使いと、天を仰いでなにやら呟いているアサシンの男。その向こうには、これまた、仰向けになってブツブツ言っている女神官と、ぐちゃぐちゃの顏でこちらを見ているレインが見えた。
「こりゃ…6メートルは優に超えているな。」とインシュアが言葉にする。
「…あぁ、外で戦って正解だったな。それに…」と、アルベルトは言いながら、レインの方向を見て
「いい囮も出来たし、生け捕りも成功したしな…」と言いながら、冷ややかな目をアサトへ移した、それからゆっくり『ギガ』の屍を見る。
「…アルさん…」とアサトが言葉にすると
「…ッチ」と舌打ちをしてから
「…おれは、こんなに汚く勝つことを教えたわけじゃね~。」と言いながら、冷ややかな視線をアサトへと向けた。
「じゃぁ…」とちょっとうつむいて言葉にすると
「あぁ…、お前らは、俺たちが掲げた課題を全て満たしている。」と言うと
「あぁ…それに、楽しませてもらったからな」と、剣を背中に付けてニカニカしながらインシュアが言葉にした
「おぃ…クソガキ…」とアサトを冷ややかな目で見ると
「…ッチ」と舌打ちをしてから、「合格だ」と言葉にした。
クラウトがメガネのブリッジを上げると、システィナは笑いながらロッドを胸に当てる。
タイロンが布で顔を拭いて立ち上がり、アサトに手を差し出す。
その手をつかんで立ち上がると、タイロンの使っていた布を借りて顔を拭き、一同を見て大きく笑顔を見せた。
ここでの訓練もおわる、そして…、これから…本当の旅。
この仲間たちと一緒に旅をして、どう生きるか決める…決めなきゃならないんだ…。
空を見上げると、雲一つない真っ青な空が広がっていた。
その空は大きく、遠くに感じている…、あの時のように…。
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