第39話 『ギガ』討伐 上
大きな足音と共に、重い地響きが近づいてくる。
そして、暗闇からゆっくりと白い肌をしている足元がみえると、徐々に巨体が現れ外へと出てくる。
その巨体は見上げる程に大きく、白い肌に大きく裂けた口、その眼は真っ黒く、どこを見ているのかがわからない。
無造作に手にしているレインの仲間は、右手につかまれている。
「…おい…あれ…」とレインが指をさす。
レインの仲間がそれを見ると、神官の女が悲鳴を上げた…そして…
「た…たすけ…て…」と盾持ちの男は声にならない声を上げる…が、レイン達は見ているだけしかできなかった。
『ギガ』は、その盾持ちを目の前に持って来ると、左手で両足をつかみ、ゆっくりとひねりながら体を引っ張り始めた。
盾持ちの男は、ダラダラと涙と鼻水を流し始めて。
「い…いたい…痛い…た…たすけ…て…」と言葉を発するが、その言葉の終わりと共に体が引き裂かれた。
血が大量に飛び散ると同時に、きれいなピンク色の腸がだらんと垂れ下がった。
それを見た魔法使いの女が気を失うと、インシュアが腕に傷をつけて、
「囮なんだから…怖がれよ!」と言い、目を覚まさせた。
『ギガ』は、腸のついている上体を上に上げて、腸を麺を食べるように口に含む。
その目の前にタイロン、そして、その後ろにアサトが立ち、柄に手を当てて見上げていた。
…さぁ…行きましょう!みんな…と声にならない声を発すると
「行くぞ!」とタイロンが声を上げる、「ハイ」とアサト
2人は、『ギガ』に向かって進み始めた
長い舌を出して涎をたらしている、しまりのない口に真っ黒な瞳、肌の色は灰色で、異様に長い手を持つ4体のノーマルグールが、足元を氷で固められ、移動する事の出来ないレインらを、物色するように見ている。
手や武器を使って逃げようともがいているレインらを、冷ややかな視線で見降ろしているアルベルトとインシュアがいた。
「た…助けて…くれよ~~」と縋るような声でレインが言うと
「あぁ~~。いいが、…それで…お前は助けたのか?」と聞く。
「…はぁ?誰を…」と言うレインに
「そっか…。じゃ…無理だ。」と言い、別のノーマルグールを見る。
「…なぁ~~、このままだと食われる…」
「あぁ…、そうだな…、おまえの仲間みたいにな」と言いながら歩き出し、女神官に手を出そうとしていたノーマルグールの背中を斬ると蹴飛ばして、女神官との距離を開ける、そして、ゆっくりとレインの元に戻って来た。
「おぃ…食っていいぞ」と立ってみているノーマルグールに言い、再びレインの頭元に立つ。
ノーマルグールは、アルベルトを見ると、ゆっくりレインを見てから少し頭を傾げ、そして、大きな声を出しながらレインに飛びかかる。
「ぎゃぁ~~」と顔を押さえて叫ぶレイン。
その目の前で、ノーマルグールが後ろへと飛ばされた。
「えっふ…えっふ…」と泣きながらアルベルトを見るレインは、壊れた笑顔を見せて
「今日は、金の甲羅取ったんだ、あんたにもやるよ、…それに、もうここには近づかねぇ~から、たのむ…俺だけでいいから助けてくれ」と言うと、アルベルトはレインを見て「出せ!」と言葉にする。
その言葉に、レインは肩にかけていたバックから、小さめの金色に輝いている甲羅を1枚取りだすと、アルベルトに壊れた笑顔を見せながら差し出した。
それを手にして「…おまえ…とことん救えないな…」と言い、レインのバックを取り上げると「ま…まて、それを持っていかれたら…俺の取り分が…」と言う、そのレインを冷ややかな目で見ながら
「…あぁ?何言ってんだお前…自分の状況をよく見てみろ」と言いながら、再び、女神官を襲おうとしているグールに向かって進み、蹴って距離をとらせると、また、レインの元に戻って来た
「あ…あぁ…分かった…、それ全部やるよ…だから…おれだけで」
「あぁ?お前…何言ってんだ?最初から、これはお前のモノではないだろう?それに…」と言い、インシュアを見た。
インシュアも、アサシンの男と女魔法使いを行ったり来たりしている。それを見て、小さくため息をつき、
「インシュア…面倒だ。一匹排除する」と言うと、インシュアがアルベルトを見て「あぁ…面倒だからな。」と言い。
魔法使いの女を襲おうとしているノーマルグールを始末した。
アルベルトは、神官の女を襲おうとしていたノーマルグールの首を切断すると、失神しかけている女神官に近づき、髪をつかんで頭を上げさせた。
「…おぃ…」とその女の顔を見ると、涎をたらし何やら独り言を言っている、目の焦点は合っていなく、瞳は泳いでいた。
足元を見ると湿っていて、なにやら股間の辺りが濡れているようであった。
「…、こりゃ…無理だな。」と言うと、レインを見る。
レインは、近づいてくるノーマルグールを見ながらギャーギャーとわめいていた。
アルベルトはため息をつきながら、レインの前にいるノーマルグールに足蹴りをして距離を取らせると、レインの頭元に立った。
「あの女は、もう正気にもどらねぇ~な」と言いながら、林に向かって歩いてゆく
「お…おぃ、どこ行くんだよ!」と言うレインに
「しょんべんだ…」と言いながら林に向かった。
「光の神よ、私に力を貸して下さい…3層の防御」
クラウトが防御の魔法をかけると、1層、2層…3層と…、4人の体に光が
『ギガ』は、手にしていた盾持ちの下部を投げ捨て、左から大きな握り拳を振り下ろしてきた。
「青き底におられし水の神、世界をまたに駆ける風の神よ…交じりあいて…私に力を貸してください…氷の壁!」とシスティナが呪文を唱えると…氷の壁が二人を守った。
振り下ろした『ギガ』の拳が氷にぶつかると、その破片がキラキラとしながら地面に降り注ぐ。
「アサト!」とタイロンが声を出すと、アサトはハイ!と言い、タイロンの背中から飛び出して向かって右足横に出る。
「アサト!太刀は一本」とクラウトが声にする、その声に弾かれたように太刀を抜き、外側のくるぶし付近を斬りつけた。
グッギャァー…と大きな悲鳴を上げる。
アサトの姿を探す『ギガ』に向かい、タイロンが盾を鳴らしながら叫ぶ
「ぐぉおぉらぁ~~~かかってこいやぁ~~」と、その言葉にタイロンに顔を向ける『ギガ』。
そして、食っていた盾持ちの上体を投げ捨て、右から大きな拳を振り下ろす、その時、目の前に氷の破片が集まって積み重なり大きな壁を作った。
その壁に拳があたると同時に、タイロンは壁の横から出て大剣で『ギガ』の右手を斬りつけた。
ぐっぎゃぁ~~~と悲鳴を上げる。
アサトは左足の後ろに入り、アキレス腱を、斬る・斬る・斬る…そして…斬ると…バッチんと大きく、ゴムのキレた音が鳴り響き、『ギガ』が前のめりになって両手をついた
タイロンは、欠かさず右足へと進むと
「システィナさん。『ギガ』に向かって、左の手から顔にかけて、火焔の壁を立てて!」とクラウトが言うと、「ハイ」と答え。
「紅蓮の淵に住まわれる炎の神と、世界をまたに駆ける風の神よ…交じりあいて…私に力を貸してください…火焔の壁」と呪文を唱える。
すると、『ギガ』の右手から顔へと火の線が入り、風がその火を立てる、瞬く間に大きな炎の壁が立ち上がった。
その炎の壁に驚き、そして、右手を挙げて
『ギガ』の左足は、アキレス腱が切れているために踏ん張りがきかない。
アサトは背中に回り込み、大きな背中をランダムに傷をつけた、その痛さに『ギガ』は背中を大きく仰け反らせると、一気に倒れ込み仰向けになった。
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