第36話 卒業試験 下
それから2週間余りがたち、アサトらは、いざとなった時にアルベルトとインシュアが助けに入る準備をしながら、4人で連携を確認して狩りをしていた。
チャ子は周りの監視と死体漁りをしている。
話しを聞けば、この手法はパイオニア独自の学習方法であるようだ。
先輩パーティーが後輩パーティーの補佐をして狩りをさせる、ダメな時は、どこがどうダメだったかを教え、パーティーの戦術が出来上がるまで、依頼をこなしながらパーティーを育成させる。
その戦術がしっかりと型にはまったところで、卒業試験をする。
試験の内容は、先輩パーティーが課題をだして、合否を決めるみたいだ、むろん、落ちたら、再び狩りの訓練。
合格したら、単独での依頼を熟せると言う事だった。
これが、初心者パーティー育成プログラムのようである。
ゴブリン7体の狩りが終わると、アルベルトはクラウトの傍に来た。
「…おれは、頃合いだと思う。」と言葉にすると、メガネのブリッジを上げて
「…あぁ…そうだな」と言葉にした。
「…なら…、あれの討伐でいいか」とアルベルトを見ると
アルベルトは、ゴブリンを漁っているアサトを見ながら小さく頷いた。
その日の夕方。
依頼所にクラウトが現れ、そして、依頼板を見ると一枚の紙をはがした。
その紙をじっくりと見てから、依頼受付カウンターへと足を運ばせる。
カウンターには女性が二人座っていて、どちらもクラウトの知り合いのようであった。
「こんにちはクラウトさん。どうやら…もう大丈夫そうですね」と、優しく声をかけて来た黒髪のメガネの女性に、微笑みながら
「あぁ、キャシーやみんなに心配をかけた」と言葉にすると
「いつも依頼を受けに来るクラウトさんが来なくなっていたので、寂しかったですよ~」と、メガネの女性の隣に座っているショートヘアーの女性が、声をかけて来た。
「パイオニアに入ったんですよね、」と、その女性が、再び言葉にすると、クラウトは小さく微笑んで見せた。
「…依頼受けるまでのチームに入れたのは、なによりです」と、黒髪のメガネの女性が微笑む。
その女性に、依頼書を渡すと…
「…え?…これ…」と、その紙を見ながら女性がクラウトを見た、この言葉にショートヘアーの女性も紙を見て…
「ま…まじですかぁ~~、これ…危険度マックスですよ」と目を丸くして言葉にした。
メガネの女性は、クラウトの表情を見る。
クラウトは微笑みながら小さく頷いていた、すると…
「もう…大丈夫そうですね…じゃ、こちらにサインをお願いします。」と紙を出した。
その紙に記入をして彼女に渡す。
「はい…それじゃ…、チーム…アサト…さんでよろしいのでしょうか?」と聞くと、クラウトは小さく頷いた。
「わかりました…、それでは、チームアサトさんが、この依頼の最優先チームとなります。なお、依頼達成前に狩られた場合は無効になります。」といい、
「やっと、自分の場所に行けるのですね…」と言葉にした、すると、クラウトは頷きながら
「うむ、これから、また新しい狩猟人生の始まりだよ」といい、その場を後にした。
2人が見送った背中には、以前と同じ、威圧感と知性がある後姿があった。
翌日
システィナは、息をのんでその場をじっと見つめていた。
アサトは、そのシスティナの横で、その大きさを改めて感じていた。
アルベルトは、腕組みをして3人を見ている。
インシュアは、一団の後方で5人を見ていた。
アルベルトの前でクラウトが3人を見ている。
タイロンは辺りを見渡していた。
「システィナさんには悪いと思ったけど…僕らの卒業試験は、ここで『ギガ』を狩る。」とクラウトが言葉にすると、システィナは小さく震えはじめた。
システィナの中で色々な思いが交差している、甲羅虫…グール…ギガグール…そして…レイン…、一人づついなくなった仲間たち…、その殺害された光景……。
その思いが交差する、複雑に交差すると…涙が溢れそうになる…。
自然にロッドを掴む手に力が入り、目頭が熱くなってきた、それを隠すためにロッドを持つ手で、三角の尖がり帽子のつばを下に小さく動かす、それを見てアサト
「大丈夫だよ…」と言葉をかけた。
そのアサトを見ると、小さく微笑んでいた。
「この課題は困難を極める。だから、今回だけは、俺たちもサポートに入るが、これは卒業試験。メインはお前たちが狩れ」とアルベルトが言うと、アサト、システィナ、そして、タイロンを見た。
「お前たちの課題は3つだ。」と言い。一歩前に出る。
「まずは、…クソ眼鏡。お前だ」と言い、クラウトの背中を見る。そして、
「お前は、俺たちのような歴戦のモノをどう扱うか見せてもらう。」
「次に…」と言うとアサトを見る。
「…俺たちは、あくまでもサポートだ、だから…『ギガ』はお前たちが狩れ」
「最後に…」と言うと、3人をじっくりと冷ややかな目で見てゆっくり言葉にした。
「一人も死ぬな」と…。
その言葉に、一同が生唾を飲む。
「…大丈夫、僕たちは成長した。自分たちの力を信じよう」といい、クラウトは振り返り、幅10メートル、高さ10メートルの大きな穴を見た。
その穴から、冷たい空気が吐き出てくる。
ゆっくりと重みのある空気…、その前いたアルベルトが振り返り、その穴を冷ややかな目で見ている。
2人の後ろには、システィナ、アサト、タイロンと3人で並んでいた。
その後ろにインシュア…、今日からチャ子はお留守番であった。
「システィナさん。」とアサトが声をかける、システィナは、アサトをつばの奥から覗き込むようにみると、穴を真っすぐに見据えて話し始めた
「やっと…システィナさんの仲間の仇を打てるね。ぼく…この日を楽しみにしていた、システィナさんは?」といいながらシスティナの方をみる。と、咄嗟につばを下ろして、目を合わせないようにしている。そして…
「大丈夫です…わ…わたし…アサト君たちとな…ら…だいじょう…ぶ…できます!」と最初はしどろもどろだったが、最後に力強く言葉にした。
「…どんな因縁があるか分からないが…任せろ、やろうぜ!」とタイロンが手にしていた盾を叩く。
クラウトは振り返ると…
「ジャンボが先頭、次にアサト、そして、僕、システィナさん。アルベルトは、僕の横。インシュアさんは、システィナさんを守りながら後方警戒の体勢で、まずは2層まで行く。『ギガ』が出てくるまでは、我々4人でグールを狩る。『ギガ』が出てきたら、アルベルトとインシュアさんは取り巻きのグールの狩りを、我々は、『ギガ』のみを相手にする」と言うと
「あぁ…いい判断だ、行くぞ黒いの!」と言い、インシュアがタイロンに声をかけた。
「…黒いの…って」と言うタイロン
「まあまあ…」と、アサトがタイロンの背中を押しながらなだめた。
そして…卒業試験が始まった…。
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