第34話 パーティーの初陣 下
それから数日後、パーティー初めての壁外訓練に出た。
外は、最近の陽気と俗に言う、“雪解かし”の雨により、所々から緑が望むほどに雪の量は減っていた。
森の中では、50センチほどのハンティングベアーの足跡があり、その近くには、被害者数名の遺体が転がっている。
アルベルト以外は、その遺体を漁って被害者の遺産を頂いた。
この大きさは、冬眠をせずに冬を越した、“寝知らず“と言われるハンティングベアーだと言う。
ここを通る狩猟者や商人を襲って、冬を越したに違いない。
ポドリアン達も一度その影を見たと言っていた。
その大きさは、4メートルを超えるのではないかと言う事である。
少し場慣れした狩猟者なら狩る事は出来るが、季節が冬ともあり、無理をする狩猟者がいなかったようだ。とクラウトが情報をくれた。
いずれにしろ、この森にも魔物は潜んでいる…。
森を出て雪原に踏み出す。
足場は悪いが訓練の延長である。
「今日から、俺とインシュアはサポートだ、お前たちが戦術を組立、そして…狩れ。」と、アルベルトが冷ややかな視線でクラウトを見ると、クラウトは頷き
「…では、僕の指示通りに」と言葉をかける
集団から少し離れたところでチャ子がセンサーを働かす。
「…」
「…」
「…」
右側に動く耳、左側に動く耳、チャ子の耳は、左右対称に動き、音や気配を探っている。と
「…いた、」と指を指す。
その先に、ゴブリン数体が狩猟者を追いかけていた。
「よし、行こう!」とクラウトが声にすると、その場に向かい駆け出す一行。
「数は…5、先頭はジャンボ。後ろにアサトがついて。システィナさんは、水と風、炎の呪文の用意を、僕はサポートする。システィナさんは、僕の傍に!」と声をかけると
「うぉ!」とタイロンが盾を前に持ち出す。
「ハイ」と、アサトが柄に手を当てる。
「ハイ」と、システィナが袋から魔法石をロッドに装備した。
「まずはシスティナさん。氷の壁でゴブを止めてくれ、ゴブがこちらに向かって来たら、ジャンボは2体。アサトは2体。システィナさんは、1体を足止め。二人の内で、先に片づけた方が足止めしているゴブを…、僕は援護とシスティナさんを守る!」と言うと、一同が声を上げる。
「…これが、今の僕らの戦法!体に叩きこむんだ!」と言うと、臨戦態勢に入り…
「青き底におられし水の神、世界をまたに駆ける風の神よ…交じりあいて…私に力を貸してください…氷の壁!」と言い、ロッドを狩猟者とゴブリンの間に向けて振り出すと、冷たい空気が矢のように振り注ぎ、そこに幾重にもなる氷の塊が壁を作って出来上がった。
1体のゴブリンが壁にぶつかるとこちらに気付く、そこに「うぉ~」と190センチを超す巨体が、大きな足跡を残雪に残して向かってゆく。
その後にいたゴブリンらがこちらに気付くと、ターゲットをこちらに向けて向かって来た。
システィナの傍にクラウトが来ると、小さく微笑みながら呪文を唱える。
「さぁ~戦いましょう。これが、僕らの初陣…光の神よ、私に力を」と長いロッドを上げ呪文を唱える
「…光の三層の防御」と言うと、そのロッドから光が放たれ、4名に降り注ぐと、光の層が、1層、2層、3層と一同に光が
「絶妙なタイミングだな」とインシュアがことばにする。
「あぁ…」と、冷ややかな視線でアルベルトが、その戦いを見て答えた
「アサト、太刀は1本。」とクラウトが叫ぶと、
「ハイ!」と言いながら、ジャンボの横を通り過ぎ、2陣で来たゴブの手前に出る。と…刃を抜き、ゴブリン2体の前に立つ。
ゴブリンは左右にばらけると同時に、アサトを無視して抜けて行く。
「ッチ」とアルベルト。
「だよな…。」とインシュア
「予定通り」とクラウトがメガネのブリッジを上げて言葉にした。
「えぇ?」とアサトは、その2匹の動きを見ながら、視界に入って来たジャンボの相手をしていた2体を斬りつける。
「ジャンボさん!」と言葉にすると
「あぁ~!」と声に出して振り返り、アサトの横を過ぎたゴブリンを追いかける。
「システィナさん、炎であれを!」と、指をさして言葉にする。
そこには、先ほど襲われていた狩猟人がゴブリンと戦闘をしていた。
「ハイ!」と返すと…「紅蓮の淵に住まわれる炎の神よ…私に力を貸してください…炎の球」と言いながらロッドを振ると、ロッドから炎の球が現れ、ものすごいスピードでゴブリン目掛けて走り出した。
その炎の球がゴブリンに当たると小規模だが爆発し、その衝撃でゴブリンが飛ばされる…。
ジャンボは大きな体を使って盾を打ち鳴らすと、1体のゴブリンが
それを一度盾で防ぐと、勢いをつけたままに大きな剣で一刺しにする。
その悲鳴を聞いて、もう1体が振り返った。
そして、アサトは…
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