第33話 パーティーの初陣 上
次の日からタイロンが仲間になった。
パイオニアのアイゼンに挨拶をしてギルド証を貰う。
これで…チームアサトは、アサトを含めた4人になった。
クラウトの予定では、あと2名から4名は仲間にしたいようである。
盾持ちのタイロン、剣士のアサト、魔法使いのシスティナ、そして、神官のクラウト。
「形は出来たな」とアイゼンが言うと、クラウトはメガネのブリッジを上げてアイゼンを見た。
「ひとつ…お願いがあるんです」とクラウト
「お願い?」とアイゼンがクラウトに視線を送る
「妖刀の使用許可…は、僕に任せてもらってよろしいでしょうか?」と言葉にした。
「…使用許可?」とアイゼン。
「ハイ、ナガミチさんの書物を読ませてもらい、妖刀の特質は理解したつもりです、あの太刀は常時使用は困難と思います。」
アイゼンは、顎に手を当てながら考えた。
使用の許可と言う事は、クラウトが適切な時に適切に使用させる…。
あの妖刀は斬った相手の血を吸い、その血にやどる怨念を使用者に送り込み、精神を食いつぶし、命を食いつぶす…。
厄介な刃を持つ、だがその見返りに、斬れない者を斬れる力がある。
使用方法を誤らなければ…かなり戦力になる武器である。
「許可の方法は、聞かせてもらえるかな?」とアイゼン
「はい…実際、あの妖刀は世間に知られれば、手にしたい者が現れる。また、遠征などには必ず必要な武器です。だが、使用方法を間違えば死を招く。前例が無いので、その作用はどのような作用…、その怨念が食らう精神はどういうものなのか…、命を食らうとは…どのようなものなのかわかりません。なので、私は妖刀に封印の呪文と使用許可のルーンを掛けます。そのルーンは私以外は解けないルーンを。」
「ルーンか…」とアイゼン
「ハイ、私より実力のある者なら、簡単に解かれるかもしれませんが…、あと、そのルーンには、付加呪文で追跡もつけます。もし奪われても奪還できるようにするためです。」と言葉にすると、アイゼンは顎に手を当てる
「この呪文さえかければ、使用は制限できる…アサトも抜けないか?」とアイゼン。その言葉に頷く。
「無理に抜いて戦うより、適所での使用を考えております。戦闘時は、妖刀は、私とシスティナが保有します。また、サブアタッカーが仲間にはいれば、使用までの時間短縮はできます…」
「うむ…、君は参謀だ。なぜわたしに許可を?」
「はい…、これは筋と言うモノを通したまでです。私はナガミチさんを存じません、そして、アイゼンさんは、そのナガミチさんにアサトのこれからを託された方…言わば、保護者みたいなものと考えております。その方の許可なく、私が勝手にアサトの所持品をどうこうしようなら、あまり良く思われないのでは…」と言葉にすると
大声でアイゼンは笑った
「…そう言う事か、クラウト君。君はやっぱり出来る男だな。ならいいだろう。君にアサトのすべてを預ける。君が思うままにやればいい。」と言うと、目を鋭くしてクラウトを見た。
「ただこれだけは守ってくれ…、太刀を折られても、取られても…わたしは一向にかまわんが、命だけは取られないでくれ。アサトの命…そして君たちの命を…」と言葉にした。
その言葉に、クラウトはメガネを上げると小さく頷いた。
牧場の雪も解け始めたが、アサトは相変わらずに修行をしている。
ある程度、二刀流も慣れて来た。
こなしている課題もスムーズに行うことが出来ている、また、アルベルトのダメ出しも少なくなった。
左右の振りには乱れはない。
二刀流にも構があるようだが、アルベルトとクラウトの話し合いで構えをする必要はないとの事になった。
そのことについて、クラウトはこう説明した。
戦いは、基本的に1本で戦う。
長期戦や他頭数の場合、交互に使い、刃のキレの損失を防ぐ。
また、二刀流での戦闘が必要になった場合はクラウトが指示を出す。
なお、戦いに慣れるまで、下級魔物相手の時は、極力二刀流を遂行する。
これは、あくまでも二刀流で戦う為の訓練である。との事だ。
そして、構の不必要性は。
基本は1本で、戦いは動の戦い方で戦う為、二刀流の構えを覚えてしまったら、また構からの戦いになる可能性があり、今までやって来た事が意味を成さなくなると思うとアルベルトが進言し、構はオリジナルでいい。
戦いやすく…、また、その時に、そう言う構になったで充分であるようだ。
ちなみに、ナガミチの書物に二刀流に関しての記述もあり、構や剣技は書かれてあったが、これを、どう教えればいいのかアルベルトが考えたが、面倒になったのも否めなかった。
実際、アルベルトの戦い方は、オリジナルであり、動きの順応性が高くなれば、色々戦い方のレパートリーも増えると言っていた。
ただ…『
呼吸の意味が分からないが、瞑想で感じた事。
無音になる…瞬間。
そして、空気の重さ…空気の感触…。
どういう理屈でそう感じたかわからない…なにか…きっかけさえあれば…。
腕組みをしているアルベルトは空を見上げていた。
もう既に春の陽気が漂っている。
暖かな日差しの中で太陽は高く、また、流れる雲もゆっくりである。
すこし風が出て来た、アルベルトの髪が揺れる。
修行をしているアサトへゆっくりと視線を移す。
その向こうには、ようやく穏やかな陽気になって来たので、白いマフラーと毛糸の帽子、短めのコートを着たチャ子が雪を丸めて遊んでいた。
インシュアとジャンボが交互にアサトの相手をする、そして、時々、どちらかが参戦して2対1の構図で打ち合いをする。
最近では、壁外での狩りも多くなってきているとの情報も得た、クラウトは頻繁に依頼所に行き、何かを確認している。
システィナは精神の向上の訓練を受けに、午前中はサーシャの元に出向いているようだ。
たまにチャ子が、その訓練を見学に行っている。
最近、チャ子は午後から文字の勉強を、サーシャから習っているみたいだが、どうも性に合わないのか、この牧場へ逃げてくる時もある。
午後になると、へなへな走りでアルニアがチャ子を呼びに来るが、アルニアは、チャ子に小ばかにされているので、遊ばれながら逃げられているが、その内、しびれを切らしたサーシャが来て、チャ子を引っ張っていく。
抵抗しているチャ子はやっぱり子供だ。
足を踏ん張って抵抗しているのをみると、何となく愛おしく見える。
システィナは風の魔法も覚え、水と風を合わせて氷を作る訓練をしていた。
魔法は、ロッドに魔法石をつけて神々にお願いする呪文を唱え、何をしたいのか言葉にする。
通常と言うか、システィナは、アカデミー卒業の報酬でもらったロッドを所持していた。
そのロッドは、一つの魔法石しか取り付けできないので、組み合わせや多色を利用した連続の魔法を唱える為にロッドを新調した。
現在は中古だが、3個の魔法石を取り付ける事が出来る。
そのおかげで、水と風を利用した氷の魔法を扱える事が出来た。
また、炎を立て、風に渦を巻かせる事の訓練や、水と炎を使って霧を発生させる訓練もしていた。
氷の壁は防御、炎の柱は多頭数に対する攻撃、霧は退却時に使える。
魔法石は、縦が15センチ、幅が10センチで上に4面、下に4面のひし形の石であり、錬金術師が製作している。
その大きさにどれだけの魔力を圧縮させて封じるかは、錬金術師の熟練度により差が生じるようである。高度な熟練度を持つ錬金術師の作った魔法石は、通常の魔法石よりも威力も数倍になる事があるようだ。
また、まれに天然の魔法石が手に入ることが出来るが、それは加工が出来ない代物であり。
ロッドへの装着は、ロッドの構造を変えなければならない。
通常、カットで安定した力を供給できるようにしているが、天然物は、形もいびつな上に必要とする精神力も分からない物なので、使ってみなければわからないが、威力は相当なモノのようである。
そのような魔法石は、最上級魔法使いが使用するが、安定性の無い物なので、好んで使用するものはほとんどいなかった。
なので、ほとんどの狩猟者は、天然物の魔法石は売りに出すが、希少性がなければ二束三文での取引となるようだ。
崖の下での魔法練習も日増しに威力は上がってきている、アサトの練習も形になってきている。
「そろそろか…」とアルベルトが、修行をしている風景を見てつぶやいた…。
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