第5話 ナガミチの遺産 上
ナガミチのパーティーは、アサシンのナガミチ、両剣使いの剣士、アズサ、盾持ちのグリフ、神官のテレニア、白髭の魔法使い、賢者アルコム。そして、錬金術師のグリムラであった。
実際、『アポカプリス』との戦いは壮絶を極めていた。
こちらの攻撃では、ダメージをつけることが出来ないし、近づく事も出来ずに、戦いは全滅へとまっしぐらだった。
『アポカプリス』が放つ紫紺の炎は、赤黒い大地をドロドロに溶かしていた。
テレニアも、アルコムも、魔法を使える限界が近付いた時に、ナガミチは背中に2本背負っていた大剣を抜くと、アサシンの技術と戦士の技術を使い、『アポカプリス』の下に潜り込み、側面の鱗と鱗の間をめがけて剣を入れ、そのまま滑らし、鱗をはぎ取った。
肌があらわになった場所に大剣を2本突き立てると、そのまま走り出し、尾の付け根辺りで剣を立て差し込んだ。
約20メートルほどであろうか…、アポカプリスの横っ腹から尾の付け根辺りまで、2本の線が入り、そして、尾の付け根には、突き刺した剣を掴んでいるナガミチがいた。
傷口からは、ドロドロとした深紅の血が流れだし、『アポカプリス』は、激痛に襲われのたうち回ると、乗っていた竜騎士の王、『リューマディア』をも振るい落とし、剣を突き刺していたナガミチも飛ばされた。
『アポカプリス』は、一本の剣が、尾の付け根に刺さったままだったが飛び去った。
『リューマディア』とナガミチは1対1で対峙した。
だが、『リューマディア』の鎧の防御が強く、傷をつける事さえできなかった。
鎧の胸元に、光る黒みを帯びた赤く透明感のある石が光っている。
2本あった剣の一本は、アポカプリスに刺さったままで、残りの一本で戦うナガミチであったが、とうとう力尽き、剣を弾かれ丸腰となってしまった。
最後の一撃を繰り出す『リューマディア』だったが、間一髪、それをさけたナガミチの手元に一枚の鱗が手についた。
破れかぶれで、目の前にある、『リューマディア』の右腕にその鱗を突き刺す。
すると、なんと刺さったのだ。
『リューマディア』も痛みに声を上げて叫ぶ。
ナガミチは、先ほどまで傷一つできなかった鎧が、壊れたのに呆気に捕らわれていたが、すぐさま弾かれた剣を取り、その鱗を叩くと、『リューマディア』の右腕が落ちた。
『リューマディア』は悶絶しながら、アポカプリスを呼んだが、ナガミチはふたたび鱗を手にすると、『リューマディア』を襲う。
その時、背後から接近してくる何かに気付き、身を翻すが間に合わず、背中に激痛が走った。
目の前には、剣が横の腹に刺さったままの『アポカプリス』がいたのだ。
『リューマディア』は『アポカプリス』に乗るとその場を後にした。
『アポカプリス』の上で、『リューマディア』はナガミチを見ていた。
その瞳は、紫に輝き、そして、怒りに満ちていた。
ナガミチは、テレニアの魔法で治療をしてもらったが、効果はなかった。
裂けた背中からは、血がとめどなく出てくる、錬金術師が魔法でそこを焼けと指示を出し、焼いたのちに冷却をした。
ナガミチの背中には、大きく
その後、テレニアの回復魔法で少し回復したのち、『リューマディア』を切断した鱗をみると、ある現象が起きていた…。
ナガミチは、鱗、約56枚と、怪しく黒紫に光る、光沢のある石。
縦10~30センチ、横10~30センチ、高さ10センチ程の様々な形の鉱石、数個を仲間と持ち帰った。
ナガミチらが、デルヘルムに帰って来たのは、旅に出てから約10年後であった。
その後、事の顛末を話し、これからの事を皆で決めた。
ただ、ナガミチの希望で、3年待って欲しいとの事であり、最後の遠征は3年後と決まった。
それから3年が経ち、いよいよ出発の時を迎えたとき、あの妖艶の魔女、クレアシアンが
そこを行き交うルートは、3か所のトンネルと山越えのルートであった。
トンネルは、最短1日で
そんなトンネルがそれぞれの街の近くにあり、その他は何日もかけ、また生死が係る事もあるような、危険な山越えのルートしか無かった。
クレアシアンは、そのすべてのルートの南側の入り口を塞いだのだ。
そこには、中級の魔物を召喚して番をさせていた。
その魔物は、『ゴーレム』である。
そして、事件は起きた。
ウイザは、牧場主の娘を嫁に貰い子供を授かった。
その子供が3歳になる時、クレアシアンに誘拐されたのだ。
ウイザの嫁に「この子を返してほしけりゃ、この子の父親の種が欲しい」と言って…。
アイゼンらは、ウイザの子の奪還をするべく、妖艶の魔女、クレアシアンの城を目指した。
そこで、ウイザを見たクレアシアンは、タイプじゃないといい、ナガミチを指名したのだ、ナガミチの種を欲しがるクレアシアン。
彼女が言うには、7日間、昼夜問わず、女に種が植えつくまで、性行為を行うと言う事だった。
ナガミチはその要求をのんだが、一人だけのめないモノがいたのだった。
アズサである。
アズサは、ウイザに「ごめんなさい…」と謝ると、クレアシアンを襲う。
アズサが攻撃に出る時、ナガミチはアズサを止めに入った。
アズサにナガミチが抱きついたまま、クレアシアンの胸元にある、黒みを帯びた赤く透明感のある石のペンダントトップに、アズサの剣が刺さった時…思い出したのだった。
元の世界の事を…。
その後、アズサがナガミチを振り払い、2度目の攻撃を仕掛けた時に、クレアシアンの左腕を傷つけた。
怒ったクレアシアンは、ウイザの息子に感覚がマヒする呪文をかけると、全員が見ている前で息子の四肢を体から引きちぎった。
そして、最後に首を引きちぎると、その頭を抱えて「…悪いのは…みぃ~んな、この人達だから…」と妖艶な笑みを浮かべた。
その体は、ウイザの息子の血で真っ赤に染まっていた。
怒り狂ったウイザが攻撃するが、魔法であっけなくやられ気絶をする。
アズサはその惨劇を見て、棒立ちの状態になっていた。
ナガミチもそうであった。
アイゼンが総攻撃の指示をだし、全員が攻撃するが傷一つ付かない。
物理的攻撃も、魔法攻撃も……。
クレアシアンは、棒立ちのアズサに向かって、魔法を放とうとしたところをナガミチが攻撃に出る。
それに気づいたクレアシアンは、ドラゴンの壁と言う、防御の魔法をかけるが、ナガミチの大太刀がそれを斬り、クレアシアンの額から頬にかけて斬った。
驚いたクレアシアン。
その大太刀が危険な武器とわかり、先ほど自分につけた、アズサの短い太刀もその一種と知ると、二人を魔法で拘束をした。
ナガミチの身体と勇気に興味を持った、その種が欲しいと本気で思うと、ナガミチとアズサに死の呪いの魔法をかけ、そこにルーンを書き込んだ。
そのルーンの内容は、『もし、この2人以外のモノに私が殺されることがあれば、二人は死ぬ』。『アズサに殺されれば、ナガミチが死ぬ』。『ナガミチに殺されれば、アズサが死ぬ』。と言う、呪いの発動に対しての付加をルーンと言うモノで付け加えた。
そして、この呪いを解く方法は…「わたしのおとこになること…」と言葉にして、妖艶な笑みを浮かべた。
もう、逃げ道は無い。
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