第3話 そして、婆は微笑む

 狼が目覚めてから一週間が経った頃、お婆ちゃんと赤ずきんは家でおやつを食べながらくつろいでいました。

「お婆ちゃん、上手くいったみたいだね」

「ええ、大成功だよ」

 あれから、狼による被害はぱったりとなくなりました。それもそのはずです。あの時、三人は狼のお腹にある仕掛けを施したのですから。

「でも、お婆ちゃん、本当に良かったの?」

「いいんだよ。物に生まれた以上は人様の役に立ってこそなんぼだよ」

 そう、お婆ちゃんは時計屋さんをしていたのです。しかし、ここ最近客足もめっきり減り、店をたたもうかと思った時に、狼に襲われたのです。そして、どうせ店を畳むのなら処分することになるだろう大量の時計のタイマーを合わせて、狼の腹の中に仕込めば、居場所がばれてしまうため、もう二度と人を襲うことが出来なくなるだろうと考えた上での策でした。

「この家、ガランとしちゃったね」

「仕方ないさ。でもね、赤ずきん」

「なぁに」

「世の中にはちゃんと助けて下さる神様がいるんだよ」

「本当? 」

「ああ。お前もいつか分かる時が来るはずだよ」

 そう言うと、お婆ちゃんは赤ずきんの頭を撫でました。


 さて、そんな狼はと言うと、これでは生活することも出来ないことが分かったので、警察に自首することになりました。

 しかし、少し奇妙なことが起こっていました。

「俺は人を食べたことがあるけど、時計なんて盗んではいない」

「とぼけるな。盗難届が出されている上に、お前の腹には大量の時計があるじゃないか。それが動かぬ証拠だ」

「確かに時計は有るけど、気が付いたら俺の腹の中にあったんだよ」

「そんな出まかせが通用すると思っているのか」

「本当だって、信じてく」

 最後まで言い終わらないうちに、またアラームが署内に響き渡りましたとさ。

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腹の中身は何だろな 花本真一 @8be

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