第57話 好みの問題

私だって好き嫌いぐらいあるけど。

サニアは持って来た袋の中身を顕微鏡の下にセットしながら言う。

その言葉は、この間サニアにペアになろうと言って断られた僕はちょっとショックだった。

ジェイミィだってそういうのはあるでしょ。

「ここにいる女の子たちはみんなかわいいし、僕はそういうのはないよ」

僕がそう言うとサニアは、当然のように言う。

B計画の参加者は一応容姿はチェックされているから、第一印象でダメという人はいないでしょ。

うん、その話はちょっと聞いたことがあった。ということは僕の外見もそんなに悪いと言う訳ではないらしい。僕はサニアに嫌だと思われていたのではないと知ってほっとしていた。


もっと一般的な話。故郷の惑星とかでこれはちょっと、という人はいなかった?

ああ、そういうことなら、3年前、父が死んで引っ越す前のアパートの隣の部屋に住んでいた女の子はきゅっと釣りあがった目が苦手だったかも。

それにトラルは、フランの細すぎる身体にはあんまり魅力を感じないと言ってたし。


例えばさ、合成ミルクパウダーが嫌いで食べなくても生きていけるじゃない?

「まあね。母親は怒りそうだけど」

合成ミルクパウダーは子供に良いものだと世間の母親たちは信じていて、強化スープに入れて食べさせたがる。

でも、例えば強化スープが食べられないほど嫌いだったら、あの惑星では生きて行けないでしょ。

サニアはそんな風に言った。

強化スープと合成パンは普通の値段で手に入るけど、強化スープを食べられないとしたら。合成ソーセージやキャベツ、コーンの缶詰なんかはマーケットで売ってはいるけどとても高価だ。強化スープのかわりにそういうのを食べるとしたらすぐに破産だ。

確かにそれでは生きて行けないかもしれない。

マリア派ってそういうものだと思うわ。


そういうものなのだろうか。

僕はフランにそれはタキタの考えかと聞いて、違うと言われて安心した。そして僕とペアだった時にユウミが他の人とそういうことをしたと聞いてイヤな気持ちになった。

問題なのはマリア派ではなくてそっちの方なのではないだろうか?

僕はまたいろいろと疑って悩み始める。


僕は何をやっているんだろう。

故郷の惑星に帰ってから、僕は何をするべきかの答えもまだ出せていないというのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

惑星~青い風の星~ 波岐 由 @yuunamiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ