第54話 利害の一致
「こんな時間に誰だろう」と僕が言うより早くフランが立ってドアを開けた。そこにいたのは、
「ユウミ?」
ユウミはずかずかと僕たちのコテージに入ってきて、
で、どこまで話したの?とフランに聞いた。
えっと、私がジェイミィとそういうことをしたくないということと、ジェイミィは判ったと言ってくれて、そのへんまで。
あっそ。そういうことだから、ジェイミィはフランのかわりに私とそういうことをすればいいのよ。
とユウミは言った。
「何それ?」
だってフランはそういうことをしたくないし、私はそういうことがしたいんだから、フランのかわりに私がそういうことをすればいいじゃない。それってウィンウィンって言うのよ。
それはそうかもしれないけれど、僕の気持ちというか意見はまるきり無視されているな。
「それってB計画的にはどうなの?」
僕はさっきと同じことをユウミにも聞いた。
うん、コテージの中まで監視されているわけじゃないしさ、黙っていればわからないと思うわよ。
まあ監視はされていないだろうな。監視されていたんならアウラとのこともバレているだろうし。
それにジェイミィが私とそういうことをすれば、B計画全体のそういうことの回数は変わらないんだし、問題ないんじゃない?
「それでユウミに子供ができたらどうするんだよ?羊水検査で今のペアの相手が父親じゃないとわかってしまうよ」
え、ペアの相手以外とそういうことをしてはいけないという明確な規定はないわ。
ユウミはそういうけれど。
ジェイミィはB計画にそんなに心酔しているの?そう聞かれた。
「そういうわけじゃないけど」僕だってむしろ最初はB計画を利用しようとしていた。
じゃあ私とじゃなくてフランとそういうことがしたいの?
「少なくともイヤだと言っている相手に無理やりそういうことをするつもりはない」
だったら何も問題はないじゃない?ユウミは僕の肩や二の腕に触れてくる。
そんなことをされると、そういうことをするならフランよりユウミの方がよっぽどいいという気になってくる。
フラン、あのさぁ」僕はフランに聞いた。
「タキタ以外とそういうことをしたくないと言うのはタキタの希望なの?」
特定の相手以外とそういうことをしたくないという女性はかつて一定数いた。けれど、自分のパートナーが自分以外とそういうことをするのはイヤだという男性だっているはずだ。
タキタの希望じゃないわ。タキタは私がタキタ以外の人とできればそういうことをしたくないと考えているのは知っているけれど、それはタキタが強制したわけじゃない。
フランはそう言った。ということはタキタは他の女の子ともそういうことをしているわけか。僕に直接関係無いけど、それはちょっと面白くない話だなと思った。
あ、あの、私ね、明日の朝のパンを仕込んでいるんだけど様子を見に行かなきゃ。
本当か嘘かわからないけれど、フランはそう言ってコテージを逃げ出した。
ユウミは僕の目を見て、両手をゆっくりと伸ばしてくる。僕はそれを遮って聞いた。
「先月、僕とペアになって最初の夜フランのところに行くって外に出たのはこういうことだったの?」
ユウミは頷いた。
「昼間に他のコテージから出てくるところも見た」
それも多分そうよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます