第50話 何が君の幸せ
その日の夕食には赤いジャムが出た。
これはもしかして?僕はこっそりアウラと顔を見合わせた。
美味しい!あちことでそんな声が上がる。そのルバーブのジャムは酸っぱすぎずにとても美味しかった。
ヤコブは試作品と言っていたのが完成したんだ。世界は少しづついい方向に向かっていると思いたい。
ジャムを塗ったパンを食べるアウラを見て、僕はアウラには幸せになって欲しいと思う。
リザリィは、スープをこぼしそうになったトラルの世話を焼いていて、僕はリザリィも幸せになるべきだと思う。
サニアはスプーンに取ったジャムを真剣に眺めている。彼女は1人でも大丈夫かな。
そしてユウミは。
ユウミとはその日2回目の任務を遂行してから話した。ユウミとゆっくり話すのはそのタイミングしかないと思ったからなんだけど。
「ねえ、ユウミは今幸せ?」僕はユウミの頭を腕に乗せたまま聞いた。
え、いきなりどうしたの?何かあったの?
「何もないけど、なんとなく。そういうことがしたいと言ってたし、今はどうなのかなと思って」
僕はちょっと焦ってしまったけど、ユウミはそういうことはあんまり気にしないようだ。
そうねえ、確かにそういうことは楽しいわね。でも、なんというかびみょー。
なんかちょっと違うんじゃね?みたいなカンジ。うまく説明できないんだけど、お腹が空いてて、合成ソーセージを山盛り出されて食べたらもちろんお腹はいっぱいになるけどコレジャナイ、本当に食べたかったのは合成ベーコンでした、みたいな。それで、今はその本当に食べたかったモノが何なのかわからない、みたいな。
例えば数学のテストで100点を取りたいけど今90点というのならあと10点ってわかるけど、本当に欲しいモノが何なのかわからないから今時分がどのあたりにいるのかわからない。あとどれぐらいで届くのかもわからない。
「難しいね。僕だって自分が何をしたいのか、何が出来るのかわからないよ」
私は、わかりそうでわからないからよけいしんどいのかも。
ジェイミィとペアになろうと言ったのは、ジェイミィとだったらなんか違うかもって思ったからなの。もちろんもらえるんなら1000万コインも欲しかったけど、ジェイミィとそういうことをしたらすごくいいんじゃないかと思ってたけど、
ちょっと待って、その後の話を聞くのが怖い。
でも個人差以上の差はなかったわね。
「そうなんだ」
その言葉に僕は安心していいんだよね?
「その、ちょっと違うというのはユウミの考えていたそういうことと実際のそういうことが違うという意味?」
うん。でもこうやってその後に話をするというのはなかなかいいわね。
「他のヤツはその後に話をしたりしないの?」
あんまりしないわよ。こんなにイロイロ話すのはジェイミィぐらいね。
他のヤツとの任務がどうだったかなんて、あえて聞かないようにしていたけど、女の子同士の間で噂されていたりするんだろうか。
はあ、B計画に参加するには鋼鉄のメンタルが必要だ。
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