第49話 その先
ジェイミィはさ、私が「子供が出来やすい日と出来にくい日がある」って最初に言った時すぐには信じなかったでしょう?
「うん、まあ」今でも完全に信じている訳では無いけど。
でもそれが教科書に書いてあることだったら信じるでしょ?
「そりゃ、教科書に書いてあることなら」
じゃあ例えば大学教授がそういうことを言ったら?
「信じる、かもしれない」
そうでしょ。そういうものなのよ。だから私は大学に行きたいと思う。まあもっと研究もしたいんだけど。
それから、燃料が安くなる話に関しては、私はもうすぐなんとかなると思っている。一生懸命探しているし。
ここで僕はまたヤコブの話を思い出した。
もし見つからなくても、採掘技術とかは向上するから、ここでは採算が合わないと一旦諦めた場所からでも採掘できるようになるかもしれない。
そしたら少なくとも出稼ぎは可能じゃない。
もちろん、ほかの惑星で穀物が実って豚が繁殖できたらそれに越したことは無いけど。
そうなった時に不利益を蒙る人が少しでも少なくなるように、私は研究したいし、発言力も欲しい。だから大学に行くわ。
「サニアはちゃんと考えていて、なんというかすごいね」
ほめても何も出ないわよ。そう言ってサニアは笑った。僕はサニアの笑う顔を初めて見たかもしれない。
「僕はどうすればいいんだろう?」
僕は多少は混乱していたし、サニアの言うことを全部信じたわけでもないけど、けれどそう言わずにはいられなかった。
任務に励めばいいんじゃない?サニアはあっさり言った。
「ええっ、そこなの?」
この惑星ではまだ植物は実らないし動物も子孫を残せない。その中でアウラのことがあるから、そこのところをもっと研究するべきだと私は思うんだけど。
「研究ねぇ」サニアに研究されたら本当のことがばれそうで怖い。
「あれは僕もわけがわからないままそうなっちゃったからなあ。研究と言ってもなにができるのかわからないよ」
そっか、そうよね。その、あれは残念だったわね。
でも、希望が無いわけじゃないとわかっただけでも意味はあったと思うわ。
「どうしてこの惑星では子供が出来ないんだろう」
言ってしまってから僕は後悔した。賢いサニアにあまり突っ込まれるのはマズイかもしれない。
そんなのわかったら苦労しないわよ。「そりゃそうだね」僕は安心した。
あ、でもアウラが妊娠したのはここに来てすぐよね?
「うん」安心撤回だな。言動に気を付けないと。
だったら、例えばここの惑星の水とかが原因かもしれない。ここに来てすぐだったから、アウラもジェイミィもここの水を沢山飲む前だったから子供ができたとかね。
そういう可能性があるなら、水も食べ物も全部故郷の惑星から持って来たものだけで過ごしてみるとか、そういうこともやってみるべきだと思う。
そういうところがB計画が甘いと思うところね。
サニアは厳しい。
「僕はここの水が飲めなくなるのはイヤだな」
そう言いながら、僕は、初めてこの惑星に来た日、この水美味しいわね、と話しかけてきたのはサニだったと思い出した。
ああ、でも水がダメならここへの移民は出来ないということになるわね。すべての水を運んでくるなんて出来ないし。
まあ、新しいことを始めるには時間がかかるということなんでしょうね。
「でも僕は、サニアの話を聞いてしまったし、僕には何が出来るんだろうかと思うよ。僕は何をすればいいのか、って」
それはジェイミィが自分で考えることでしょ。そう言ってサニアは行ってしまった。
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