第48話 政策

それから、ちょっと話が変わるけどここ何百年かは人口はほとんど変わっていないし上流階級の人の割合も変わっていない。

「うん」

技術者階級はちょっとだけ増えた。でもこれは技術が進歩して技術者が必要だからだわ。でも、貧民窟の人の割合は増えているの。そうねえ、5%ぐらいから、今は15%ぐらいまで増えたんじゃないかしら。

「そんなにいるの?」僕はちょっと意外だった。

みんな階級ごとに固まって住んでいるから目立たないだけよ。

政府は、安い給料で働かせることができる中卒の人が増えるほうが都合がいいと思ってる。と思う。

「それはおかしいよ。だって学歴によって就ける職業が決まっているのに」

じゃあジェイミィは今は中流階級の仕事とされている工場で何かを組み立てるとか検品とかは高校を出ていないと出来ないと思う?

「それは、、、ちゃんと教えてもらえればできると思うけど」

でしょ。実際問題、老人施設での介護の仕事だって十何年か前に高校を卒業していなくても出来るように変わったんだから。

「それは人手が足りないからじゃなかったのか」

表向きはそうだけど、老人施設なんて公営だし、そもそもどの学校を卒業したらこの仕事が出来ると決めるのは政府だもの、そんなの都合のいいように調整できるじゃない。


「老人介護の仕事を安い給料でやってもらえるなら政府が得をするのはわかったけど、中流階級以上のほぼ全ての人が得をするというのがわからない」

おかげで税金が上がってないということ。老人介護を中流階級の人がやってたらもっとお金がかかって税金を上げなきゃならなくなる。高齢者の割合は増えているから。


税金が上がっていないから得をしていると言われてもあんまり実感が無い。もちろん税金は高くなるより現状維持がいいけど。そしてもっと言うと安くなるのがいいけど、それでもそのために一部の人が不利益を蒙るのは間違っている。


僕がそういうとサニアは、こんなの1つの例で同じようなことはもっと沢山あると言った。問題なのは、大多数の人が得をしているとしてもその実感がないことだと言う。

僕は今までこんなもんだと思いながら何も考えずに生活をしてきた。僕はどうすればいいのだろう。サニアの話を全部そのまま信じた訳では無いけれど、ヤコブの話も聞いてしまったし、多かれ少なかれそういうことは行われているんだろうと思う。


「それで、サニアはどうするつもりなの?」

私は、B計画の参加報酬の500万コインで大学に行くつもり。

「500万コインだよ、ってああ、サニアは技術者階級なの?」

え、ああ、奨学金の500万コインはもう貰っているの。それとあわせて1000万コイン。これだけあれば大学に行けるでしょ。

僕はアウラの言ったことを思い出した。「奨学金って1000万コインじゃないの?」

2種類あるのよ。1000万コインのほうはさすがに難しそうだから確実な500万コインの方にしたの。併願はできないしね。それで、B計画の参加者に選ばれなかったら、まず専門学校に行ってそこから大学への編入というのもできるし。奨学金と参加報酬の合わせて1000万コインで大学に行ってもいいそうよ。

「そうなんだ」僕は奨学金が2種類あるとか知らなかった。まあ、奨学金の話なんて、高校で学年トップの成績じゃなかったらまず出てこない話だからある意味当然か。


中流階級から技術者階級や上流階級に行くことは、行ける人の数は少ないけど不可能じゃない。でも一旦貧民窟に落ちるとそこからは絶対に抜け出せない。そんな生活を自分の代で終わられるために子供を作らないということも選べない。そこにも悪意が感じられるけど。

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