第46話 間違っていること

僕はのろのろと洗濯をして、しばらくはぐるぐる回る洗濯機を眺めて、それからのろのろと洗濯物を干した。


僕はショックを受けていた。今回はびっくり、ではなくショックだな。何故なら、僕は知っていたから。35歳までに子供を作れないと財産没収の上強制労働が課せられるということを。

知ってて、義務を果たしていないのだからある意味当然、とどこかで思っていた。強制労働と言っても、給料なしで働かされる、その程度の認識だった。

僕は持っていく場所の無い感情を持ったまま午後の作業をこなした。


ヤコブは今は幸せだと言ったけど。でも。こんなの、何かが間違っている。


その日の夕食にはカレー味のキャベツの料理が出た。煮てあるようなんだけど、キャベツのしゃっきりした感じは残っていてそれでもちゃんと中まで味がしみこんでいる。

こんなのを作れる人が不適格者だなんて。

「ヤコブの料理は美味しいね」そうつぶやいたら横でユウミが、それ、私も手伝ったのよ、と言う。

「そっか、ユウミもすごいね」ユウミは褒めておいたら機嫌がいいので僕はとりあえずそう言っておく。


その夜、コテージに帰ってきた時も僕は憮然としたままだったと思う。

こんな時、アウラだったら「どうしたの?」と聞いてくれるだろうと思う。

リザリィなら、何も言わずに後ろから抱きしめてくれると思う。

ユウミはいつもと同じで僕をベッドに誘う。

いや、比べちゃいけないということはわかっているんだけれども。


それでもユウミは最中に、何考えてるの?と聞いてきた。

僕は「何も考えてないよ」と答えたけど、やはりユウミにも僕の心が今ここに無いことはわかったんだろう。

ユウミは僕の方に両手を伸ばし、最中には僕にしがみつくようにする。

ああ、ユウミとは、この求められている感じがいいんだと思う。


僕はやっぱりユウミにも癒されている。

どうしてこれが子供を作る行為なんだろうと思う。そんなの、結婚しましたと区役所に届けを出せばもれなく2人生まれるようにできないんだろうか。

宇宙船が飛び回っている時代なのに。でもそれなら工場で小麦が作れるようになればいいのか。

こんな、運にまかせたようなやり方はおかしい。

何が悪いのかわからないけれど、悪いのは1つだけではないのかもしれない。少なくともヤコブがあんな目にあっていいはずがない。


やっぱりサニアと話がしたいな、と思った。

彼女なら何かを知っているかもしれないし、知らなくても僕よりは考えていることがあるはずだ。

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