第45話 強制労働
それから私は全財産を没収され、知らないところに連れて行かれて赤く焼けた焼印を押されて、その熱さと痛みで私は気を失ってしまった。
ヤコブは話しながらもどんどん洗濯機は解体されていき、モーター部分が見えた。僕はこれを見たかったはずなんだけど、今は黙ってヤコブの話を聞く以外のことが出来なかった。
次に目が覚めたときは暗くて寒い惑星にいた。私は気を失ったまま、コールドスリープの装置に入れられたらしい。おかげでこの焼印の跡は化膿したりせずにきれいに残ったみたいだけど。
そこに連れて来らて、化石燃料の採掘をさせられた。それは危険な作業で、2ヶ月たった頃には最初30人いた仲間は半分になっていて、それからその惑星での採掘は採算が合わないと切り捨てられ、残った私たちは別の惑星に連れて行かれ、死んだ仲間の遺体はその場に放置された。焼くための燃料がもったいなかったんだろうね。
「ひどい」いくら不適格者としても遺体をそんな風に扱うのはひどいと思う。
別の惑星でも採掘作業をさせられ、その後連れてこられたのはこの青い風の吹く惑星だった。
ここはいいよね、暑くも寒くもないし、マスクなしでも呼吸できる。
それはもっと過酷な環境でずっと働かされていたということだろう。
私たちはここで井戸を掘り、建物を作った。ここの食堂もコテージも私たちが建てたんだ。
しかしそれももうすぐ完成というある日、事故が起きた。足場が崩れて、私ともう1人が落ちた。彼は助からなかった。
私は、足を怪我して、先に赴任して来ていたドクターと所長に助けられた。
そして建物が全て完成して、建築作業をしていた不適格者が他へ送られる時私はまだベッドから起きられなかった。B計画の責任者に私をどうすればいいかと所長が聞いてくれて、ああ、今回の建設作業はB計画が不適格者を雇っているという形だったからね。その時の答えは「そちらで処分してくれ」ということだったそうだ。
「ええっ、そんなことって。。。」
私たちは便利に使える消耗品だからね。
ヤコブはモーター部分の修理を終えて、洗濯機を組み立て始めた。
その時、また事件が起きた。
次に到着した宇宙船は、トイレットペーパーや強化スープの缶詰と、カウンセラーとして赴任したケイトと、ここにコック兼雑用係として赴任するはずだった男を運んできた。
だけど、その男、ヤコブはコールドスリープから目を覚まさなかった。
「えええええっ!?」
事故か病気か、コールドスリープ装置の故障かその時はわからなかった。B計画の責任者は困ったんだろうね。代わりを送るとしても人1人のために宇宙船を出す予算は無かっただろうし、なによりコールドスリープから目覚めなかった人がいるなんて知られたら、B計画の参加者はいなくなってしまう。
ヤコブは他人事のように話すけれども。
そこで私が目覚めなかった本物のヤコブの代わりにここで働くことになった。これだと誰も損をしないからね。目覚めなかった本物のヤコブはかわいそうだと思うけど、こんなところに1人で働きに来ようなんて、家族はいないかいても縁を切っているんだろうと所長は言ってたけどね。
ということで、この惑星では元不適格者の偽者ヤコブが働いているのさ。
はい、直ったよ。ジェイミィも洗濯をするんなら今のうちだよ。あ、今の話、一応ここだけの話にしておいてね。
「ああ、はい、ありがとうございました」
僕はのろのろと洗濯物を取りにコテージに戻った。
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